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大台ヶ原、日出ヶ岳に至る遊歩道で撮影。

大台ヶ原、日出ヶ岳に至る遊歩道で撮影。この後、熊笹の茂みの中から三頭の鹿が飛び出してきた。
今回の取材を案内してくれた上田さんが主催する『古座川アドベンチャークラブ』では、
カヌーやシュノーケリング、トレッキング、自然学習など、季節に合わせたさまざまなプログラムを用意している。
●問い合わせ先TEL 090-1672-5522/0735-72-3293

大台ヶ原。熊笹の茂みの中に三頭の鹿。

大台ヶ原。熊笹の茂みの中に三頭の鹿。

昭和2年に建てられた北大和歌山研究林の本館。

昭和2年に建てられた北大和歌山研究林の本館。標本室では樹木や動物、昆虫類など多数の標本を展示している。

山の神からいただいた一瞬の恵み

 その日の午後、上田さんは熊野川の支流のひとつ、北山川を望む高台へと私たちを誘ってくれた。この川をさらに遡ると景勝地、瀞峡がある。瀞峡見学の船が着くポイント近くで、今日2カット目の撮影ポイントが決まった。ポジションを決め、日が暮れるのを待ってシャッターを切る。

 撮影ではこのシャッターを切るタイミングも重要になる。表紙の撮影はほとんどの場合早朝か薄暮、そうでなければ曇天もしくは雨天という状況だ。青空の見えるような晴天では、光が強すぎて自然が織り成す微妙な色彩の階調が削がれてしまうからだ。

 翌日、いよいよ熊野川流域の滝へ出かける。しかしあいにく朝から空は雲ひとつない晴天。 「参ったなぁー。普段心がけがよすぎるんだよ」
 と、恨めしそうに澄んだ空を見上げる梅田さん。その顔に強い陽射しが容赦なく照りつける。ともあれ、熊野川を目指して新宮方面にフォレスターを走らせる。すると、新宮に近づくにつれて前方にどす黒い雲が湧き始め、私たちがまさに熊野川沿いの道を河口からさかのぼり始めた時に激しい驟雨(しゅうう)に見舞われる。

「よーし、いい感じになってきた!」
 梅田さんの表情がパッと明るくなった。上田さんは国道からそれた枝道に私たちを誘う。深い緑に囲まれた九十九折の道を登っていくと、眼前に二段になって流れ落ちる滝が現れる。鼻白の滝だ。雨が降ったためにあたりにはうっすらと靄が立ち込め、空は薄暗く、光のコンディションも絶好だ。これで少しでもクルマが見えるポイントがあれば…。傘をさしてクルマを降り、滝を目の前にしてスペースを探す。

「あっ! あれカーブミラーじゃないですか!」
 上田さんが指し示す方向を見ると確かに小さなオレンジ色のカーブミラーらしきものが見える。撮影ポイントからは距離があり、携帯電話も通じないため、クルマを前後左右に動かすための手信号を決めてフォレスターをカーブミラーの元へ走らせる。下から見ると撮影隊の場所を見つけるのは至難の業。それらしい場所に行き、木の間から目を凝らすとはるかかなたの緑の中にぽつんと開く白い傘が見えた。

 目が距離に慣れてくると手信号もどうにか判別できる。右へ、左へと、クルマのポジションを数cm単位で移動する。そんなふうにして撮影したのが今月の表紙写真である。

 撮影完了から数分経つと、雨は嘘のように上がり、上空には再び夏の青空が見えてきた。このわずかなチャンスは、熊野の山や川を支配する自然の神が、景色を求めて右往左往する私たちに少しだけ手を差し伸べてくれた、一瞬のプレゼントだったのかもしれない。



カートピア編集スタッフのスナップショット
一枚岩ロケハン 大森山保存林 カメラマンとの打ち合わせ

一枚岩ロケハン

大森山保存林

カメラマンとの打ち合わせ

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