
首都高速を走るのは、東京の今を感じる最良の手段のひとつだ。江戸時代には運河として利用された川の上に建設された首都高速は、蛇行してうねるようなカーブを繰り返しながら都心の奥深くに分け入っていく。窓外には、休む間もなく刻々と変わって行くこの街の景観が流れ去る。
ただ、大抵の場合この道は渋滞している。今も昔も、このルートは大都会を支える物資輸送の要となっているからだ。朝晩は通勤の乗用車が、その姿が消えた深夜の時間帯になると、大小のパネルトラックの列が絶え間なく続く。
この道をドライブするなら、週末の夜明けの時間帯がいい。東の空がうっすら白み始める頃、トラックの列がわずかに途切れる瞬間が訪れる。新しい朝の訪れは、清清しい空気をこの街に運んでくる。エアコンを止め、窓を開けて都会の空気を浴びて走ることができるのも、この時間ならではの贅沢だ。
川を利用して設けられた首都高速のレイアウトは独特だ。
様々な曲率のコーナーが現われ、地上30メートルの高架から一気に地下に降りたかと思うと、再び地上へと上昇する。渓谷沿いに設けられた道にも似たコーナーやアップダウンが続く。ブラインドコーナーも多く、決して気を緩めることはできないが、ハンドリングを楽しむには絶好のコンディションでもある。
闇が遠のくに連れ、街の輪郭が次第に明らかになっていく。新宿、六本木、汐留…、今の東京は、芝の東京タワー以外にもモニュメンタルな建築物が各地に次々に誕生している。それら近未来的な建造物を遠景、近景に眺めながら気持ち良い速度でOUTBACKを走らせていると、どこか別の国の、別の時代の都市に紛れ込んでしまったかのような気がしてくる。
かつて、人のイメージが具現化するというストーリーのSF映画の中で、未来都市の風景として、首都高速を疾走するクルマから見た映像が使われた。カメラは、水の流れを写すかのように淡々と、流れ行く風景を追い続けた。
同行したアシスタントは、同じ風景に別の未来都市を見ていた。 「東京の街って、改めて見ると驚きますね。昔、ドラえもんの漫画に描かれていた未来のビルとそっくりのビルがいくつもできてる…」

かつてイメージの中で形作られた未来都市は、いま、間違いなく具体的な形となって、私たちの前に存在している。いや、もしかしたらこれは想念が具現化するという映画の中の話かもしれない…。
コーナーが迫ってきた。シフトダウンしてアクセルペダルに力を込め、OUTBACKのステアリングを握りなおす。