
こうして2009年に発売された新型レガシィ・シリーズに“リニアトロニック”が搭載された。クルマの動きをドライバーの意のままにリニアに制御するまったく新しいトランスミッションであるとの思いから、従来のCVTという呼称を止め、新たに“リニアトロニック”という名称が与えられた。
「リニアトロニックはコンパクトでありながら将来的には350N・mの大容量のトルクまで伝えるポテンシャルを持っています。また、従来のCVTよりも伝達効率が良く、燃費を向上させ、さらにドライバーをふくめた乗員全員が快適な移動を楽しめる新しいオートマチック・トランスミッションに仕上がったと思います」
計算上は、4ATと比較すると10%、5ATと比べると6%から8%、それぞれ燃費が向上している。燃費を1%向上させるのも至難の技といわれる現代の自動車技術のなかで、この大幅な燃費向上は目を見張るものがある。現代は地球温暖化の要因であるCO2削減が世界人類のテーマであり、自動車という商品にとっては燃費向上こそが、そのテーマに応える指標となる。レガシィはそれをひとつ実現したのであった。
スバル技術本部トランスミッション設計課で研究開発を続けてきた安並は、工場研修でもトランスミッションのラインで働き、ドイツに駐在していたときもトランスミッションの調査研究にあけくれた。まさにトランスミッションひと筋にSUBARUの技術を追求してきた技術者である。完成したレガシィを眺めながら安並はこれまでの長い道のりに思いを馳せていた。
「CVTを世界で初めて市販したSUBARUの先輩たちは、このリニアトロニックを見てなんと言うだろう・・・。また、開発過程で知り合った、チェーン・タイプの金属ベルトを作っているドイツのエンジニアが教えてくれた諺を思い出しました」
それは、“長く時間をかけたものは、いいものだ”という意味のドイツの諺だった。
「どのようなプロセスがあったにせよ、年月をかけたものは信頼できる、いいものなのだ。確かにそうなんだろうし、そうあるべきだと改めて思いました」
だが、安並は「これで終わりではない」と言い切る。
「お客様のご意見をお聞きして、さらなる進化をさせていきたいと思います。私たちはリニアトロニックを量産実用化させたという段階に達しただけで、これを進化させて、もっと素晴らしいトランスミッションにしていくという仕事があります。技術開発に終わりはありません」
安並はスバル技術本部の技術者のひとりとして、淡々とした簡素な言葉で決意を述べていた。
その決意こそ、地球自然環境の悪化をふせぎつつ、乗員全員が快適で楽しく安全に移動をするクルマを提供していこうと考えるSUBARUの最大の意志であることは言うまでもない。
