運転を通して大地を感じ、
到着地でさらなる感動に出合う。
ドライブの先に見つけた、
本当のグランドツーリング。

レヴォーグで旅する山梨県の旅

2022.01.31 | #10 Grand Touring /Story2:EXPERIENCE「水源の森 キャンプ・ランド」

都会で暮らす当たり前に、ふと違和感を覚えることがある。
夜でも明るいことに、冬でも暖かいことに、身の回りのさまざまな便利に。それを否定するつもりはない。だが時折、心の奥の方で人間の本能が疼くのだ。
「キャンプに行こう」
そう思いたった。時期外れなことはわかっている。寒さによる苦労があることも予想できた。しかしそれでも、今の時期にしかない体験が、忘れかけている何かを思い出させてくれるのではないか、と思ったのだ。
そしてもうひとつの理由。キャンプ場の聖地といわれる道志村に2021年、「水源の森 キャンプ・ランド」という新たなキャンプ場が誕生したという。アウトドアブランド「マウンテンリサーチ」を主宰する小林節正氏が総合プロデュースを務めるこの施設。
「何を持っていくかより、何を持っていかないかを考える場所」
とのコンセプトを聞き、いま胸の奥に疼く思いとのリンクを強く感じた。私はトランクのギアを大きく間引き、大きな期待を胸に道志へと向かう。
都心に背中を向けて高速道路を進む。インターチェンジを通り過ぎ、交通量が減り始める。高速道路を降りて、山道を進む。徐々に人工物と自然との比率が逆転する。特段、故郷に似ているわけではない。かつてここを訪れたことがあるわけでもない。それでもなぜか「帰ってきた」という思いが浮かんできた。いよいよ道志村が近づいてくる。
山梨県 道志みちを走るレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
神奈川県相模原市から山梨県道志村を抜け山中湖村までを繋ぐ国道413号線、通称「道志みち」。適度なワインディングと道の両端に緑が迫る豊かな自然が楽しめるツーリングスポットを走る。道の脇には清流・道志川の流れ。高低差のためドライブシートから川面は見えないが、窓を開けて走ると、時折せせらぎの音が届く。
道志みちは、噂に違わぬ走り甲斐のある道だった。
遠望する山並みはカーブを越えるごとに形を変え、見飽きることがない。道路脇にはキャンプ場やカフェ、農産物の直売所がポツリポツリと現れる。
山梨県 道志みちの直売所とレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
妙に品揃えの良い無人販売所があり、心中の支持が性善説に大きく傾いた。掘っ立て小屋の直売所では、店主が茶を振る舞ってくれた。
「このあたりは水が良いから、お茶が旨いんだよ」。
そう言って出された茶は、たしかに抜群のおいしさだった。
旅の途上で話した老人は「かつてこの辺りは海だった」と話し、近くで拾った秘蔵の化石を見せてくれた。 
山梨県 道志みちの無人販売所とレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
山梨県 道志みちの販売所 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
道志みちを走り、土地の人と話し、土地のものを口にする度に、少しずつ体が軽くなるような気がした。それは都会で暮らすために無意識にまとっていた鎧を脱ぎ捨てていくような感覚。心が軽くなり、思考がクリアになり、自然の中に溶け込んでいく感覚。それがたまらなく心地良い。
途中で食材を買い込んで、「水源の森 キャンプ・ランド」に到着した。ここを訪れるにあたり、私にはひとつ決めていたことがある。
「目に映るすべてのコト、モノに意味を見出そう」。
「マウンテンリサーチ」のデザインには、山で生きるためのギアとしての研ぎ澄まされた機能性と、個性や遊び心が見事なバランスで共存している。そのブランドを率いる小林節正氏の手による施設なのだから、“なんとなく”ではなく、すべてに細やかな計算と狙いが潜んでいるはずだ。そしてドライブという都会と自然との緩衝帯を経てきた今の私には、都会で暮らす日々とは違う新たな視点を得ているのではないかと思ったのだ。
無論、答え合わせは必要ない。見当違いだと笑われても良い。そこに潜む意味を自分なりに考えることで、より深く「水源の森」の世界観、そして自然そのものに浸れるのではないか、と目論んだのだ。
山梨県 日中の水源の森 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
クラブハウスに入ると、正面に大きな時計が掛かっていた。頂上が13時、針の動きは逆周り。これは日常とは異なる時間を過ごすことが狙いだろう。巨大な火皿で炎が揺れているのは、山の世界からの挨拶代わりか。駐車場には車止めがあり、キャンプサイトに車を付けることはできない。これもきっと、現代の利器から離れ、あえて不便を楽しむことを推奨しているのかもしれない。
山梨県 水源の森クラブハウス外観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
山梨県 水源の森クラブハウス内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
施設について勝手に想像するうちに、お会いしたこともない小林氏と対話しているかのような気分が湧いてきた。都会から自然への急な場面転換ではなく、このクラブハウスを挟むことで、心のエンジンが温まり、ワクワクとした気分が膨らんでくる。想像はさらに膨らむ。
キャンプサイトは道志川を見下ろす崖の上。そのさらに上にはキャビンがあり、さらに上の層にクラブハウスがある。まるで演劇の舞台を見下ろすような段々の造り。ならば主役は道志川だ。止むことのない川のせせらぎが、崖を這い上がってくる。川の音、森の匂い、澄んだ冷たい空気が肌を刺す感覚。さまざまな感覚が、社会人としての私の日々の役割を引き剥がし、ひとりの人間に戻していくようだった。ここでの主役は道具ではなく、人間だ。何を考え、どう過ごすのか。何も決められていない。だから私は自ら考え、動かなくてはならない。
山梨県 夕暮れ時の水源の森 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
焚き火に当たりながら、先程買ってきた肉や野菜で料理をする。包丁がないので、ナイフで野菜を切った。お玉が見つからず、スプーンで鍋をかき混ぜた。スマホの充電が切れてしまったが、一晩くらいは構わないだろう。
「なんとかなるものだな」。
私はこの状況がおもしろくなってきた。
キャンプとは元来、便利な現代的生活を離れて自然の中で過ごすことだ。しかし場数を踏むにつれて、いつしか便利なギアで効率よく過ごすことが当然になってしまっていた。冬のキャンプ場で不便に触れることで、感覚と感性が研ぎ澄まされていく。夜が更けるにつれて川の音が大きく聞こえたのはきっと、水量の問題ではなく、私の聴覚が鋭さを増したのだろう。だから星の瞬きは美しく、できたての料理はたまらなく美味い。
いつしか気温は氷点下を下回っていた。焚き火の側を離れられないほどの寒さの中、私はこの時間を心から「楽しい」と思った。足りないものを工夫で補い、静かな時間の中で周囲に思いを馳せる。社会の中での役割を離れ、心は人間に、動物に、そして自然の一部へと戻っていく。その体験は、楽しさ以外の何物でもなかった。夜が暗いことに、冬が寒いことに、言いようのない感動が湧き上がった。
大地を感じるドライブで、都会から自然へと心は滑らかにシフトした。その助走があったからこそ、キャンプ場での時間はいっそう感動に満ちていた。人間が自然の一部だと強く感じた。自然の前ではどんな誤魔化しも意味を持たず、ただ本質と向き合うことだけが求められた。
都会と自然の架け橋となるドライブと、その時間があったからこそ得られる訪問地での体験。この一連の流れによって完成する得難い経験こそが、私が追い求める本当のグランドツーリングなのかもしれない。
山梨県 水源の森に佇むレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

水源の森 キャンプ・ランド
住所:山梨県南都留郡道志村馬場5821-2
電話:070-2673-1122     
URL:https://www.doshisuigen-mori.com/
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