北国の魚は美味い。漠然と思っていたそんな印象。
3軒の店で得た実体験により、
私の印象は確信に変わった。

レヴォーグで旅する青森県の旅

2022.03.07 | #19 Aomori Touring /Day9:EAT「八戸市営魚彩小売市場・みなと食堂・ドライブイン汐風」

旅の朝は、特別な時間だ。静寂の中、まるで世界中で自分だけが目覚めているかのような、少しだけ得意な気分に浸ることができる。
今日も早くに目覚めた私は、車の鍵を取り手早く身支度を済ます。目指すは陸奥湊の朝市。八戸の食卓を支える朝市を訪れれば、この地のことをより深く知ることができるかもしれない。
走り始めてエンジンが暖まるまでのしばしの時間、車内に満ちた冷気さえも心地よい。北国の冬。遠くまでやってきたという想いが改めて湧き上がる。フロントガラスの向こうは、まだ暗い。ひっそりと眠っている街を走り抜ける。
青森県 夜明け前の陸奥湊の朝市を走るレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
少し早すぎるかと心配したが、朝市はすでに活気に包まれていた。本丸である『八戸市営魚彩小売市場』はリニューアル準備のため仮店舗での営業中だったが、地元の方言で“イサバのカッチャ”と呼ばれる魚売りのお母さんが、ずらりと並ぶ魚の前に陣取る様子は健在。道路にも小売店が軒を連ね、軽トラックやバイクが行き来する。まだ夜明け前の小さな喧騒。ここに足を運ばなければ、わからなかった熱気だ。
この朝市では朝食も楽しみのひとつだ。各店で小分けの刺し身や惣菜を購入し、別途購入する白米や味噌汁とともに、店舗の一角に設えられたテーブルへ。新鮮な刺し身で自分だけの丼を作るのは、早起きの特権だ。
漁港の街の朝市の刺身は、やはり鮮度が桁違いだった。冷たい海に揉まれた魚体は身が引き締まり、脂も十分に湛えている。青森県の魚の底力を、改めて思い知らされる体験だった。
青森県 活気に包まれた「八戸市営魚彩小売市場」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「八戸市営魚彩小売市場」で購入した刺身でつくった海鮮丼 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
陸奥湊の朝市で青森の魚にすっかりはまった私は、その後も美味い魚を探して行脚した。『みなと食堂』は、先の朝市から目と鼻の先にある一軒。オリジナルメニューのヒラメ漬け丼は、オリジナルのタレで漬けにしたべっ甲色のヒラメに、卵黄が乗った食欲をそそる一杯。しっかりめのタレの味付けに注目されがちだが、厚めに切ったヒラメの食感と淡白なおいしさが味の根底を支えている。
「とにかくヒラメの質が命。最高のヒラメだけを見極めて、売り切れたらお終い」
と店主・守正三氏もヒラメの質に胸を張る。ここも青森県の魚の魅力を、ダイレクトに味わえる店だ。
青森県 「みなと食堂」ヒラメ丼 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「みなと食堂」内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「みなと食堂」店主・守正三氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
ヒラメでいえば、日本海側も負けてはいない。とくに鰺ヶ沢町は、街を挙げてヒラメの漬け丼を名物として売り出し、10軒ほどの店が工夫を凝らした丼を提供しているという。そのうちの一軒『ドライブイン汐風』を訪ねてみた。古くからイカ焼き屋が集まり、いつしか“イカ焼き通り”と呼ばれるようになったエリアの一角。そこは窓の外に海を一望する最高のロケーションだった。
青森県 「ドライブイン汐風」から一望する日本海 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
壁に貼られたメニューには、鰺ヶ沢名物のヒラメ漬け丼が大きく書かれていた。この店では氷温で熟成させることで、旨味と弾力を引き出しているという。さっそく注文しようとして、その横のメニューが目に留まる。イトウ丼。たしかにそう書かれている。
イトウといえば、幻の魚といわれる希少な淡水魚だ。実物を目にしたことも、もちろん食べたこともない。3代目店主という對馬喜貴氏に聞けば、鰺ヶ沢町では研究の末にイトウの養殖に成功したのだという。ヒラメと悩んだ末に、希少性に惹かれ、イトウ丼を注文した。
青森県 「ドライブイン汐風」の内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「ドライブイン汐風」3代目店主の對馬喜貴氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
イトウはサケのような見た目だが、弾力があり、脂の旨味がありつつもすっきりとした後味。その透明感のある味わいが、少し甘めの醤油ダレと抜群の相性だった。そのおいしさもさることながら、食べたことのない魚を北の果てで味わえたという体験が、私の気分を高ぶらせた。そしてここでもまた、青森県の魚の底力を知った。
青森県 「ドライブイン汐風」のイトウ丼 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北国の魚は美味い。漠然と思っていたそんな印象を、明確に形作った3 軒の食堂。青森の魚の味を実体験として知った私は、今後もこの素晴らしい味の記憶とともに生きていくのだ。そして「旨い魚を食べたい」という欲求が閾値を越えたとき、ふらりと北に向けてハンドルを切ってしまうのだろう。
「魚を食べるためだけに、青森まで?」と驚く友人がいたら、連れてきてしまうのも良いだろう。そして今回の魚を食べさせて「どうだ旨いだろう?」と、まるで自分の手柄のように笑うのだ。私はそんな未来の旅を夢想して、なんだか無性に可笑しくなった。

DATA

八戸市営魚彩小売市場
住所:青森県八戸市大字湊町久保38-1
電話:0178-33-6151   
URL:https://visithachinohe.com/spot/hachinoheshiei-gyosai-kouri-shijo/
みなと食堂
住所:青森県八戸町湊町久保45-1
電話:0178-35-2295   
URL:https://visithachinohe.com/stories/shokusai/
ドライブイン汐風
住所:青森県西津軽郡鰺ヶ沢町赤石町字大和田38-1
電話:0173-72-3401   
URL:http://www.ajiiku.jp/category/detail02_16.html
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