自然と寄り添い、ともに生きる暮らし。
風光明媚な有明海の景色に私は過ぎ去った時代の面影を見つけた。

2022.03.15 | #21 Saga Touring /Day2:DRIVE「【内海】海中鳥居・海中道路・多良岳オレンジロード・有明海」
人間文化と手つかずの自然は、ときに互いに相容れることのない対比として語られる。
人の営みである文化、ありのままの自然。しかし佐賀においては、文化と自然が密接に繋がり育まれているようにみえる。文化と自然という2つの円で描く図であれば、それが重なり合う部分が大きいのだ。 たとえば土を素材に人の手で整形される陶磁器、たとえば海の恵みを人の手で凝縮させる海苔。農業や漁業もそうだ。佐賀の暮らしぶりを見て、佐賀の人々の話を聞くうちに、人の営みが自然から切り取り奪い取るのではなく、自然から分けてもらっている、という意識の元に成り立っているように思えてきた。
佐賀県 レヴォーグの車内から「有明海」を眺める | SUBARU グランドツーリングNIPPON
この日、私は内海と呼ばれる有明海沿岸方面へと向かった。
リアス式海岸の外海である玄界灘方面は、曲がりくねった道が多い。しかし干潟に沿って作られた有明海の道は、海に沿って真っ直ぐに伸びる道路だ。
早朝に宿を出た私は、まずその真っ直ぐな国道207号線を走って太良町の「海中鳥居」を目指した。その名の通り、海の中に建てられた3基の鳥居。満潮の時間には海に浸かり、干潮になると基部まで見えるという。
朝、訪れたそこは満潮に近い時間だった。鳥居の脇にある「太良海中道路」は、漁船の水揚げに使用される作業用の道。そこも見る間に潮位が上がり、道路は海に沈んでいった。
佐賀県 満潮で海に沈む「太良海中道路」とレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
この太良町には「月の引力が見える町」というキャッチフレーズがあるらしい。見えない何かに引き上げられるように目に見えて潮位が上がる海面は、まさに可視化された引力だ。
「そがんとこでなにしと?」
私が不思議な光景に見惚れていると、突然後ろから声をかけられた。
通行の邪魔になってしまったかと急いで道を開けると、ニコニコ顔の老人が立っていた。散歩中の地元の方だろうか。
「写真撮っとるんか」
という問いに頷くと「すごいだろ」と豪快に笑った。
それから少しだけ話をした。老人はどこか誇らしげに、この海の景色を語っていた。それから「もういいかい?」と言うと手を振って、半ば海に沈んだ海中道路をじゃぶじゃぶと歩き、停泊していた船に乗り込んで出航していった。
彼はここを仕事場にする漁師だったのだ。私は仕事に向かう彼を遮ってしまったことを悔いるのと同時に、自らの仕事場を無遠慮に見学する観光客にニコニコと話しかけ、満足するまで待ってくれた彼の優しさを思った。
船で出かける老人を、手を振って見送った。海中道路と海中鳥居は、すっかり海の中だった。
佐賀県 満潮で海に沈む「太良海中道路」とレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
佐賀県 満潮で海に沈む「海中鳥居」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
どこか温かい気持ちに満たされた私は、海沿いの道から少し山側に入った「多良岳オレンジ街道」へハンドルを切った。地図で見つけたこの道は、山の中を抜ける一直線の農道だ。実際に走ってみるとそこは、地図から想像するのとはまったく違う道だった。
その名の通りみかん畑が両脇に広がるのは予想通りだが、そこは整備が行き届いた気持ちの良いドライブルートだった。山々の間を深い谷が分断する多良岳。その谷を数々の橋で繋ぐことで直線の走りやすい道になっているのだ。そして谷に架かる橋の上からは有明海を望む。爽快で走りやすい道だが、同時にこの橋ができる前はどれほど難所だったのかと想像する。トンネルを掘るのではなく、橋で山々を繋ぐことで景観は守られている。その事実を前に、この一大事業に掛けられた月日も思う。みかんの旬は過ぎていたが、随所に黄色い実が見える。最盛期に来れば、もっと華やかで美しい光景が楽しめるのだろう。
佐賀県 「多良岳オレンジ街道」を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
佐賀県 「多良岳オレンジ街道」の橋を駆けるレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
全長17kmのオレンジ街道を走破して、再び海沿いの国道に戻った。昼は国道沿いに10軒以上点在している牡蠣小屋を訪れてみた。この牡蠣の養殖もまた、有明海の恵みを人の知恵で活用する、この地ならではの文化だろう。
佐賀県 建ち並ぶ牡蠣小屋と国道を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
食事と休憩を取り、海沿いをのんびり走っていると、潮位が下がっていることに気づいた。朝は海面に浮かんでいた船が、海底の泥の上に接している。そして有明海の干潟が姿を現した。
海の中にあった海苔の養殖場は、干潟で見るとなおさらその規模が際立った。遠目でわからないが、この干潟の中には、無数の生物が育まれ、そして地元の生活を支えているのだろう。
私は潮位によって変化した景色を見たくなり、再び「海中鳥居」へと車を走らせた。今朝、見たばかりの海景色は、まったく別物になっていた。あの老人と出会った海中道路も、完全にその全貌を見せている。有明海の干満の差は、最大で6mにも及ぶという。たしかに景色が一変するわけだ。この土地の人々は、その海を守り、海と寄り添いながら暮らしているのだ。
流れる時間の中で、もちろん人々の暮らしに変化はあるだろう。開発された技術も、最適化された生活もあるだろう。だが私は干潮の有明海を前に、時代を経ても変わらないこの地の生活を想像していた。船の動力が変わったが、きっと昔の住民たちも、満潮になったら海に出て、干潮の時間は陸で作業をしていたのだろう。山々を繋ぐ橋はできたが、かつての人々もきっとみかん畑で夕暮れまで仕事をしていたのだろう。
時間は止まることはない。しかし時代の面影は残る。有明海は、古き日の面影をありありと想像させるような、そんなノスタルジックな景色だった。一日かけてその光景をたっぷりと愉しんだ今日のドライブ。距離の移動だけではなく、時間の移動によって景観が変わる。そんな自然の営みが実感できる稀有な時間だった。
佐賀県 干潮時の「太良海中道路」とレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
佐賀県 干潮時の「海中鳥居」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
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