7つの橋を渡り、7つの島へ至る道。
とびしま海道のドライブの末に見つけた
不思議な海の色。

2022.05.13 | #29 Hiroshima Touring /Day1:DRIVE「とびしま海道・御手洗地区」
瀬戸内海には、太陽が似合う。
「安芸灘とびしま海道」をドライブしようと決めたのは先週のこと。それから毎日天気予報をチェックしながら、今日の日を待った。
そして爽やかな朝日とともに目を覚ます。
瀬戸内、初夏、晴れ。
黄砂で少しモヤってはいるが、絶好のドライブ日和。歓声を上げたいような気分だ。
地図をざっと眺めただけの目的のない旅。瀬戸内海の島へは足を運びたいが、あえて山側からアプローチしてみよう。ずっと海沿いを走ってから島に入るよりも、山道を抜けてから海が開ける方が、いっそう爽快感が増すのではないかと思ったのだ。
広島市から東に向かい、まずは野呂山を目指した。開放的な海景色が印象的な瀬戸内だが、もちろん内陸に入れば山だってある。そして野呂山は、想像以上に素晴らしい山だった。緑は濃く、空気は澄んでいる。つづら折りの道は、走り甲斐がある。窓を開けてみれば、平地より少し冷たい風が頬を撫でた。頂上を越え、道は下り坂に変わる。そして木々の向こうに、海が見える。陽光を反射して輝く、瀬戸内の海。
思わず笑顔がこぼれる。長い山道を抜けた先に、海が広がる。雲間から光が差すような晴れやかな景色の変化に、私のテンションは一気に上がった。
広島県 「野呂山」の林道を走るレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 「野呂山」の山道を駆けるレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 「野呂山」のワインディングロードを走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 「野呂山」の山道を走るレヴォーグと瀬戸内海 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
「安芸灘とびしま海道」は、瀬戸内海に飛び石のように並ぶ7つの島を連絡橋で結ぶオーシャンロード。橋は愛媛県までは繋がっておらず、つまり行き止まりのある道路だ。道中では、それぞれデザインの異なる橋と、豊かに変化する海景色が愉しめる。そしてとびしま海道の終着地にほど近い大崎下島の東端には、伝統的な建造物が連なる「御手洗地区」がある。
「絶景と名高い瀬戸内の島々。さあ、どんな景色が待っているのだろう」
私は胸を高鳴らせながら、アクセルを踏み込む。
最初の橋、本州と下蒲刈島を結ぶ安芸灘大橋は、壮大だった。人類の叡智を想わせる巨大建造物。まるで来る者を、両手を広げて歓迎するような佇まい。走りながらちらりと視線を動かす。両側に広がるのは、小さな島々がぽつりぽつりと浮かぶ美しい眺め。波はなく、水面が陽光をキラキラと反射する。島の間をフェリーがゆっくりと進んでいる。のんびりと穏やかで、爽やかで、開放的で。この景色の中を走るためだけに旅をする価値があると思った。
広島県 「安芸灘大橋」を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 しまなみ街道海道脇で一時停止するレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
島に入っても、どこかのんびりとした雰囲気はそのままだった。交通量はきわめて少なく、道は走りやすい。あらゆる場所から海が見え、潮の匂いがする。段々にはみずみずしい緑が芽吹く。
瀬戸内の海はライトブルーだ。
車を停めて近づけば、底を見通せるほど澄んでいるのに、少し離れてみると明るいライトブルーになる。爽やかな海は、気持ちまで爽やかにさせる。私はゆっくりと車を走らせ、ときに車を停めて歩き、じっくりとこの日のドライブを愉しむ。優美なアーチ橋を越え、重厚な鉄橋を越え、コンクリートの橋を越える。島を渡るごとに、異なる海景色が目を愉しませる。
広島県 瀬戸内海の島々が見える海景色 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 瀬戸内海と佇むレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
太陽が真上に登る頃、大崎下島の御手洗地区に到着した。
ここは江戸時代から行き交う船が天候を待つ港として栄えた港町。いまなお当時の面影を残す町並みが残される重要伝統的建造物群保存地区だ。
駐車場に車を停めて、街を散策する。
そしてすぐに気がついた。“保存地区”に定められているが、ただ眺めるだけの街ではない。住宅があり、商店があり、郵便局もある。人が歩き、暮らし、生活をしている生きた街だった。御手洗地区の散策は、不思議な体験だった。映画のセットのような作りものめいた感じがなく、歩いているうちに時間の感覚が曖昧になる。まるでいまもこの街の中で江戸時代の生活が繰り返されているような、不思議な生活感があった。
広島県 「大崎下島」御手洗地区の伝統的建造物が建ち並ぶ街並み | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 「大崎下島」御手洗地区の港町 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
ふと郵便局の壁に、一枚の絵が飾られているのが目に入った。この御手洗地区を描いた絵だ。注意して見ると、ほかにもさまざまな場所で、同じタッチの絵が見つかる。この地区を描き続ける画家がいるのだろう。
広島県 「大崎下島」御手洗地区の郵便局 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 「大崎下島」御手洗地区の郵便局の壁に飾られている田中氏の絵 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
しばらく歩いていると「みたらいギャラリー」なる建物があった。「ご自由にお入りください」の文字に誘われて扉を開ける。案内によれば、画家・田中佐知男氏の作品を展示するギャラリーだという。たしか先程の絵にも“Sachio”のサインがあった。迎えてくれたのが、田中氏ご本人だった。
広島県 「みたらいギャラリー」で展示をする画家 田中佐知男氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
田中氏の話を聞いた。
愛知で生まれ、名古屋の大学に進み、研究職に就いたこと。パリへ研修に行った際に美術に触れ、幼い頃からの“絵かきになる”という夢に再び火がついたこと。フランスで本格的に絵を学び、帰国後、奥様の実家がある広島に移ったこと。そして旅行で訪れたこの御手洗地区に惚れ込み、移住したこと。いまでもほぼ毎日、御手洗の海をスケッチしているという田中氏。
広島県 「みたらいギャラリー」で絵を描く 画家 田中佐知男氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
田中氏の描く海は、まるで絵自体が発光しているような、眩しさを覚えた。自然界の光は混ざるほどに透明になるが、絵の具は混ざると黒くなっていくもの。目を凝らしてみると、田中氏の絵は、細かい細かい点で光を構成する無数の色彩を乗せることで、光そのものを描いていた。きっと、途方も無いほど長い時間、この地の海と光を見つめその正体を掴み取っているのだろう。
広島県 「みたらいギャラリー」で絵を描く画家 田中佐知男氏の描く筆先 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 画家 田中佐知男氏と「みたらいギャラリー」に飾られている田中氏の絵画 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
「海はいつも同じです。しかし朝昼夕方夜、天気や季節によってもがらりと色を変え、二度と同じ海はありません。僕はそれをすべて描きたい」
かつて研究者だった田中氏の画法は、観察と分析。とにかく観察し続けるために、愛するこの地に移り住むのは当然のことだったのだろう。
「いまは独特の和の雰囲気のある色。夕方になるとね、ここにピンク色がかぶさってくるんですよ」
昼下がりの海を見つめながら、田中氏が言った。
ピンク色の海。私はそんな童話のような景色を想像する。だがきっとそれは画家の特別な色彩感覚が捉える、いわば比喩なのだろうと思った。
広島県 瀬戸内海と瀬戸内海を見ながらスケッチをする画家 田中佐知男氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
田中氏に別れを告げ、夕方前に御手洗を発った。来るときに通った島々を、逆周りで辿る。景色の印象は、午前とはまったく違った。遠くの島がシルエットになり、暮れゆく海を彩る。視界の隅に映る夕日は、早送りの映像のようにみるみる沈んでいった。
そしてその一瞬。
私は思わず路肩に車を寄せた。息を呑む眺めだった。日が海に沈むほんのひとときだけ、あの画家の言葉通り、海はピンク色だった。いままでさまざまな海を見てきたが、初めて見る色だった。
なぜこの色になるのかはわからない。だが私は、この色の海があることをすでに知った。知っていると思った瀬戸内海の、知らなかった色。自然の偉大さ、豊かさ、日本の広さ。さまざまなことに思いは飛んだが、強く心に残ったのは瀬戸内の色だった。海のライトブルー、段々畑の淡い緑、夕日のピンク。何度も目にした風景の中で、はじめて見つけた色彩。そんな微妙な色に気づけたことこそ、この瀬戸内の魔法なのかもしれない。
広島県 瀬戸内海の夕日に佇むレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 瀬戸内海の夕日に佇むレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
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レヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
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