全力で遊ぶための秘密基地のような宿。
ときには大人にも、
こんな場所が必要なのかもしれない。

2022.05.27 | #34 Hiroshima Touring /Day6:STAY「瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島」
広島には魅力的な宿泊施設が多い。
百万都市の広島市街には名だたる名門ホテルが並び、瀬戸内の島々にはオーベルジュからペンションまで、そして山間部には老舗の温泉宿もある。選択肢が多すぎるのはうれしい悩みだ。
ひとつずつ希望条件を追加していく。瀬戸内の海を望むオーシャンビュー。波音が部屋まで届くような静かなロケーション。その雰囲気に浸れるような貸し切りの宿。わがままを追加する度に候補は減り、最後に一軒のヴィラが残った。
そのヴィラは大芝島という小島にあった。大芝島は調べてみても、わずかな情報しか見つからなかった。周囲7km、島民はわずか100名。みかん栽培が盛んで、島内にはレストランも商店もない。
少ない情報をつなぎ合わせて想像する。きっと瀬戸内の凪いだ海のように静かな島なのだろう。朝日で目覚め、日没で仕事を終えるような、昔ながらの生活が残っているのだろう。きっと、心震えるような美しい景色と出合えるのだろう。私は「瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島」を予約し、その日を待った。
当日、私は胸を高鳴らせながらハンドルを握り、広島市から東広島市街を経由し、南下。やがて海が見えてきた。凪いだ海面がキラキラと輝く、想像通りの瀬戸内海だった。海岸沿いをしばし走り、「大芝島」の案内看板に従う。
予想に反し、本土と大芝島を結ぶ橋は立派だった。確かに車がすれ違えぬほど橋上の道幅は狭かったが、島民100名ほどの小さな島の入口としては橋自体の構造は重厚で、そして美しかった。大芝島に寄せる期待が、いっそう高まった。
橋は大芝島の西端にあり、目指すヴィラは島内の東端にあった。地図によれば島内の外周をぐるりと道路が繋いでいる。一周約7kmの島だ。南北どちらまわりでもそう違いはないだろう。私は深く考えることもなく、南側の道を選んだ。
想像していた通りの景色が広がる。犬の散歩をしている人、海に釣り糸を垂らす人、軒先の椅子にただ座っている人。小さな港沿いにはガードレールもない細道が続く。山の斜面の段々畑はみかん畑だろう。波音が生活のリズムを刻むような、浮世離れした離島。
右手の浅瀬の先に岩山が見えた。案内には「大芝島のモンサンミッシェル」とあった。言われてみれば、あの修道院とよく似ていた。小さな発見のひとつひとつが、私の心を都市の時間から島の時間へと移行させる。それは日常のしがらみを捨て去り、おおらかな心になっていくような体験だった。
広島県 本土と大芝島を結ぶ橋を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県大芝島のガードレールのない港沿いを走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県大芝島の岩山「大芝島のモンサンミッシェル」沿いを走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
小さな島を半周分、ゆっくり走って30分もかからぬ道中だが、意外にも見どころが多く濃密なドライブだった。そしていよいよ目的地に到着する。
「瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島」は、海を望む道路に建っていた。地中海のような雰囲気の建築はこの島にあって異質だが、不思議と景色と馴染んで見えた。
そこで待っていたのは、オーナーの山田悟市氏だった。
山田氏の案内でヴィラ内を歩く。海側は全面ガラス張り、館内全てがオーシャンビューだ。寝室からも、バスルームからも、リビングからも、ダイニングからも、どこにいても海が見える。白を基調にした室内に瀬戸内の光が差し込む。眩しいほどの光。
その圧倒的な開放感は、これまで私が見てきたどんな宿とも違った。すべての部屋が横一線に配置され、部屋を移動するためには別の部屋を通り抜ける必要がある。だが、どこにいても海が見える。つまり利便性や動線など商業施設ならば当然重視される部分よりも、瞬間的な景観を重視しているように見えた。便利であることよりも、楽しい場であること。それは言うなれば、振り切った遊び心のようなもの。私はたちまちこの空間の虜になった。そしてどんな想いでこの宿をつくったのか、山田氏に聞きたくなった。
広島県 大芝島「瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島」とレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
チェックインの手続きは済んだが、山田氏を引き止めて話を伺う。 山田氏はこの島でもう一軒同じようなヴィラを営んでいるという。だが生まれはこの島ではない。ただこの島、この海に惚れ込み、通い続けたのだ。
「この大芝島に島外から移ってきた最初のひとりが私です」
そう山田氏は言った。
「それはこのヴィラを開くためにですか?」
私の問いに山田氏は「いいえ、遊ぶためですよ」と笑った。詳しく聞いてみると、どうやら本当のことらしい。
若き日の山田氏は、とにかく本気で遊び尽くした。冬は雪山、夏は海。大好きなハワイにも足繁く通った。とくにウェイクボードはプロを目指すほど熱中した。好きなことに熱中する生き方に憧れていた。そうして自分でも「遊び尽くした」と思えた。やがて年齢を重ね、海遊びにはドクターストップがかかった。そして山田氏は考えた。
「自分が大好きなこの海を、もっと知ってほしい」
自分の海遊びの拠点だった家を改築してヴィラにした。そこだけでは足りなくなると、自分の理想を詰め込んだヴィラをもう一軒、ゼロから作り上げた。1日1組限定の、隠れ家のような貸し切りヴィラ。海を間近で見つめ、感じ、マリンスポーツをするにも、ただゆったりと過ごすにもぴったりの場所。それがこの「瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島」だ。
広島県 大芝島「瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島」オーナー 山田悟市氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
山田氏と別れ、テラスのデッキチェアに座る。
波音は静かで、規則正しい。太陽の角度により、海の色は刻々と変化する。ダイニングで食事をするときも、リビングのソファに腰を下ろしても、海は見え続けた。やがて完全に日が落ちて、窓の外の景色は真っ黒になった。しかし波音は変わらずに届いた。
それは人生の中で、もっとも海に近づいた一日だった。常に海が見え、聞こえる。だんだんと海の存在に慣れ、その存在が当たり前になる。時折、目の前の海をフェリーが横切り、ふと高い波音が聞こえると、再び海に意識が向く。そんなことの繰り返しだった。
じっと海を見つめたり、その波に想いを馳せる時間ではなかった。ただそこに海があり、私は意識と無意識の間くらいで、その存在を感じている。それがなんとも心地よいのは、きっと島の人々も同じように海を感じていると思えたからだろう。
旅という短い時間の中で、土地の人の想いの一端に触れる。それは狙ってできることではないが、旅の魅力をこれ以上ないほど凝縮した体験だ。そして一度この体験をしてしまった私は、これからも島や秘境や山間をめぐり、今日の宿のような存在を探し続けるのだろう。
広島県 大芝島「瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島」から見えるレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
広島県 海沿いに佇むレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

瀬戸内ヴィラ ダイアリー大芝島
住所:広島県東広島市安芸津町風早2612-8
電話:0846-45-6251
URL:http://y51.jp/
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