ニセコの自然で、全力で遊ぶ大人たち。
未来に自然を残すためのそれぞれの愛し方と伝え方。

2022.07.22 | #48 Hokkaido Touring /Day6:EXPERIENCE「フライフィッシング」「トレッキング」
今回の旅に出かける前、何人かいる現地の知人に、夏のニセコの魅力を尋ねてみた。もちろん、仕事や年齢により答えはさまざまだったが、ひとつだけ一致していたことがある。
それは、とにかく夏のニセコは気持ちが良い、ということ。
世界的なスノーリゾートとして大勢の人で賑わう冬から一転、雪が溶け、観光客が減る短い夏は、もっとも爽やかで自然が心地良い季節なのだという。
そしてひとりはこう付け加えた。
「自然の中まで踏み込めば、もっとニセコの夏が満喫できる」
山歩きや渓流釣りで、自ら自然に近づいて行く。それは確かに魅力的だが、未知の土地ではあまりにハードルが高い。するとその人は、ふたりのエキスパートを紹介してくれた。私は言葉に甘え、案内を頼むことにした。
ひとり目は倶知安で『Boroya』というピザ屋を営む、上田英貴さんという人物だった。昼から店の仕込みがある上田さんがフィールドに出るのは午前中。冬は早朝からまっさらなゲレンデを一番に滑り、夏には海まで出てサーフィン。そして渓流でのフライフィッシングも、30年以上続ける大ベテラン。このニセコの地で、自然を相手に本気で遊んでいる人物だ。
北海道 釣ったニジマスを見せるピザ屋「Boroya」のオーナー 上田英貴さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON
ニセコの自然を愛する上田さんはガイドを生業にしているわけではないが、仲間や知人がやってくれば、時折、自分が知る釣りスポットに同行することもある。今回は初対面で不躾なお願いではあったが、共通の知人を介したことで、案内をお願いすることができた。
待ち合わせ場所にやってきた上田さんは、事前情報から想像していたよりも穏やかで親しみやすい人物だった。フライフィッシング初挑戦の私に、道具の使い方から丁寧に教えてくれる。そして上田さんが経験の中で見つけ出したスポットに案内してくれた。
北海道 草木をかき分けて渓流へ向かう | SUBARU グランドツーリングNIPPON
雪解け水が流れる渓流に膝まで浸かりながらふたり。
「この声はエゾハルゼミ」
上田さんに教えられて、改めて耳に集中する。今まで意識していなかったが、言われてみればセミの大音声がうるさいほどだった。
「この時期はニジマスがセミを食べるために活発になります。ただ今はまだ水温が低いから、動き出すのは小さい魚から。水の流れに逆らうように上流に向けて泳ぐので、そこに合わせるようにラインを流すんです」
上田さんの毛鉤は、すべて手作り。魚の餌に似せるように固定した針に動物の毛を巻きつけて作っていく。もちろん、ただやみくもに作るのではない。
「たとえばカワトビケラが水面に卵を産みに来る夕方には、その虫を模した毛鉤を使います。いわば魚との知恵比べです」
水中の生物学を理解した上で、そこに合わせた毛鉤を作り、現場に立つ。フライフィッシングとは自然を深く知り、自然に入り込む、いわば究極の自然遊びなのかもしれない。
北海道 フライフィッシングで使う虫を模した毛鉤 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 フライフィッシングの様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
上田さんの毛鉤に魚がかかった。そして難なく釣り上げる。同じ場所に立ち、同じ毛鉤を使っているのに、私のロッドは微動だにしない。少し場所を変えて、またしばしロッドを振る。再び上田さんにヒット。
これが実力の差なのだろう。元来、負けず嫌いの私だが、今日は別に悔しくもなかった。自然を研究し、スポットを探し、毛鉤を作る。フライフィッシングは、その全体のストーリーを愉しむものだ。この日、突然やってきた私が釣れないのは、当然といえば当然なのだ。
「釣っているとき、どんなことを考えているんですか?」
手持ち無沙汰な私の質問に、上田さんは笑って応える。
「何も考えてないかなぁ」
それはきっと自らが自然の一部になるような境地なのだろう。上田さんがこの地の自然を愛し、自然とともに生きる意味が、はっきりとわかるような言葉だった。
北海道 フライフィッシングの様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 ニセコの渓流 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 釣れたニジマス | SUBARU グランドツーリングNIPPON
その夜、『Boroya』にお邪魔して、上田さんのピザを味わった。仕事中でもさして変わらぬ自然体の上田さん。スノーボードやサーフボードが飾られた趣味全開の店構えも、彼の話を聞いた後では深い意味があるように感じられた。
北海道 「Boroya」の内観とカウンターに立つ上田英貴さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON
ふたり目の案内人は、三浦一斗さん。
自ら手掛ける『カメレオンコーヒーカンパニー』でコーヒーの焙煎、販売をするほか、ニセコのコンシェルジュとして雪山のインストラクターから宿やレストランの手配、山歩きのガイドまで幅広くこなす人物だ。そしてもちろん、ニセコの自然を心から愛する人物でもある。
北海道 山菜を見せるニセコのコンシェルジュ 三浦一斗さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON
4歳からニセコで育ち、ニセコ全体に深い知識と人脈を持つ。かつてはプロスノーボーダーを目指したというだけに、冬山はお手の物。オーストラリアとニュージーランドで4年暮らした経験から英語も堪能で、外国人へのガイドもこなす。東京で3年務めた経験から、地元への俯瞰的な視点も持つ。まさにニセコの伝道師というべき人物が、この三浦さんだ。
ニセコ全体を知り尽くすが、特にニセコ東部の蘭越町に強いという。その言葉に従い、蘭越町での山歩きの指南を願った。
「山菜を探しながら歩きましょう」
という提案だ。 ニセコ渓谷沿いを走る道道268号線をしばし走り、車を停めた。そこが山歩きの入り口だった。
北海道 ニセコの一直線の道を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 レヴォーグのリアガラスに映る青空と木々 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
山道は整備されているが、夏草が伸びて道を塞ぎ、時折、屈んだり、手で草を払ったりしながら進む。耳には鳥の声と川のせせらぎが届く。三浦さんは周囲に茂る草葉の中から、目ざとく山菜を見つけては教えてくれる。
「これは山菜の女王といわれるコシアブラ。断面から爽やかな香りがするでしょう?」
「これはウルイ。レタスのように生で食べられます」
「こっちはアマドコロ。山のアスパラと呼ばれています」
と、深い知識と経験で、歩きながら次々と山菜を見つける。しかし三浦さんが採るのは、それぞれの山菜をほんの少しだけ。この山菜の宝庫のような場所で、なんとももったいなく思えてくる。
そんな疑問を投げかけてみると、「食べる分だけ、山に頂く。それで十分です」と晴れやかに笑う。
「たとえばこの行者ニンニク。採るのは葉が2枚になっているものだけです。1枚のものはまだ子どもだから、残しておきます。逆に3枚葉は種を落とすので、それも採らない。そうやって自然を大切にする心も同時に伝えていきたい」
三浦さんはそう言った。
北海道 山菜を探す 三浦一斗さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON
しばし歩くと、水音が大きくなってきた。ぬかるみに気をつけながら歩くと、開けた視界に豪快な滝が見えてきた。
「さあ、休憩しましょう」
そう言って三浦さんは、岩の上にコーヒーをセットし始めた。自ら焙煎した豆を挽き、その場でドリップする。手近な岩に腰掛けて手渡されたコーヒーを味わった。心の底から吐息が漏れるほど、最高の一杯だった。
北海道 ニセコ 滝 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 三浦さんが用意してくれたコーヒーセット | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 コーヒーをドリップする様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
滝を見ながら三浦さんと話をした。
「いま私が大事にしているのは、“ハーフワイルド”という言葉。テクノロジーなしでは生きていけない時代ですが、半分で良いから野生を取り戻そう、という意味合いです。ニセコに来て頂けたら、それを体験として伝えることができます」
穏やかで、思慮深い三浦さんの言葉。そこから伝わる、地元への誇り。三浦さんもまた、ニセコの自然を深く愛する人物だった。
「自然に親しみ、自然を大好きになってもらうことで、自然を守る側に回ってもらいたい」
とガイドを通して自然を守る道を選んだのだ。
山菜の消費期限は短い。本当は採ったその日に料理をして食べるのが一番だ。だから、この後もしばらくホテルに滞在する予定だった私は、この日採った山菜の持ち帰りを辞退した。代わりにその夜、三浦さんからメールが届いた。
「今日の山菜、おいしいですよ。次回はぜひご一緒に」
そんな一文と、そえられた山菜料理の写真。そのやさしい言葉は、三浦さんの人柄をありありと伝えてくれた。
北海道 滝と三浦一斗さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

Boroya
住所:北海道虻田郡倶知安町北2条西2丁目signビル1F
電話:0136-55-8036URL:https://www.boroya.com/
カメレオンコーヒーカンパニー
Instagram:https://www.instagram.com/chameleon.coffee.company/
三浦一斗 インスタグラム
Instagram:https://www.instagram.com/kazutomiura/
三浦一斗 自然ガイド インスタグラム
Instagram:https://www.instagram.com/halfwild_hkd/
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