全てが初めての感覚だった。
それは、人生の1ページとなった
食体験。
そして、私は早くも
再訪を誓った。

2021.11.25 | #5 Niigata Touring /Day5:EAT「Restaurant UOZEN」
「新潟に、すごいレストランがある」。
かつて友人から、そんな話を聞いた。「おいしい」でも「おもしろい」でもなく「すごい」という言葉が気になって、ずっと心に引っかかっていた。だから今回新潟行きを決め時、真っ先にその店を予約した。店の名は『Restaurant UOZEN』。魚屋や割烹のような名だが、フランス料理店だという。 
三条の市街地を通り抜ける。徐々に民家はまばらになり、やがて見渡す限りの田園風景に変わっても、カーナビはまだ前方を示している。かすかな不安がよぎり始めた頃、地図は一軒の和風建築を指し示した。フランス料理店には見えないが、看板には『魚善』とある。どうやらここで間違いないらしい。
新潟県 Restaurant UOZEN内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
引き戸を開けると、世界が一変した。
マダムがにこやかに出迎える。薪の優しい香りが体を包む。暖色の木の基調としていながら山小屋のような印象にならないのは、凛とした清潔感のためか、モダンな家具のためか、あるいはガラス越しに見えるワインセラーのためか。鹿の角などのワイルドな調度品も、抑えが利いて上品にさえ見える。 
私は、すぐにこの空間が好きになった。 

洗練と素朴、都会と田舎、日常と非日常、さまざまな要素の狭間に見事なバランスで存在しているように感じたから。 

不思議な浮遊感に身を任せながら、コースが始まった。
新潟県 Restaurant UOZENまでの道のりで望む弥彦山 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

“洗練と素朴、都会と田舎、日常と非日常、さまざまな要素の狭間に見事なバランスで存在しているように感じた”

最初は4品のアミューズから。まず運ばれてきた皿を見て、息を飲んだ。その「皿」は、動物の頭蓋骨だった。上には猪肉のパテ。手で摘んで、口に運ぶ。力強い旨味が口に広がった。少し遅れて脂の甘味と香味野菜の香り。いつまで経っても臭みはない。よほど処理が良いのだろう。聞けば店主自らが狩猟に出て仕留めた猪だという。
だが味そのもの以上に、このプレゼンテーションに心を奪われた。頭蓋骨の器から、手づかみで、ジビエを食べる。本能を刺激するような、原始的な食体験だ。 
続くアミューズは自家菜園の甘長唐辛子に熊のラルドとチョリソーを詰めた料理、ジビエの腸詰めに衣をつけたホットドッグ、自家製生ハムに合わせたキャラメルオニオンのマカロン。どの料理にもメッセージが込められている。それはいうなれば、人間は所詮動物であるという根源的な食。美しく、洗練されたこのディナーが、まるで生きるために食べているかのように錯覚させる。
新潟県 Restaurant UOZENで供されるアミューズ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 Restaurant UOZENで供されるアミューズ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 Restaurant UOZENで供される食事 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 Restaurant UOZENで供されるシグネチャーディッシュ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
おいしい。それは間違いない。そのおいしさを言葉で表現することもできる。だが、それ以上のインパクトは、数字や言葉では表現しきれぬ精神論だ。そしてそれこそがこの店の“凄み”なのだ。
鯨肉のタルタルや、魚介のコンソメゼリーを纏わせたボタン海老を味わった後、店主・井上和洋氏と話ができた。この井上氏、料理だけではなく自ら所有する船で釣りに赴き、冬になれば鉄砲を担いで犬を連れて山に入るという。
新潟県 Restaurant UOZENで供されるアミューズ | SUBARU グランドツーリングNIPPON

“まず運ばれてきた皿を見て、息を飲んだ。
その「皿」は、動物の頭蓋骨だった”

「大変ですね」。
私の言葉に井上氏は笑って応える。 
「好きだからできているんでしょうね」。 
それからこう付け足した。 
「猪でも鹿でも熊でも、誰がどう獲って、どう締めて、どう保存したかわからない食材は使いたくないんです」。 
嘘をつけない人特有の、まっすぐな言葉。
新潟県 Restaurant UOZEN店主 井上和洋氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
井上氏は話している間、時折、言葉に詰まって無言になる。だがその沈黙は、決して居心地の悪いものではなかった。なぜなら彼がその場を取り繕う言葉を選んでいるのではなく、自分の気持ちを形にする方法を必死に探していることがわかったから。
「初めて狩猟に出た時、師匠に何度“撃て!”といわれても、結局最後まで引き金を引けませんでした」。
しばらくの会話の後、彼はそう話した。理由は「かわいそうだったから」。 
今では日々ひとりで狩猟に出かけては、多くの獲物を撃つ井上氏。しかし、それはきっと命の重さに鈍感になってしまったわけではない。彼はきっと自らが自然の一部として、自然のサイクルに参加することに決めたのだ。
付け足すならば、井上氏の料理技術は超一流だ。フランス料理としての完成度だけ見ても、近隣で群を抜いているだろう。しかし彼がどんな一流店で修業を積み、どんなテクニックで料理を仕立てているかは、些細なことに思えた。それほどまでに素材や料理に対する考え方が太く、重厚だった。
新潟県 Restaurant UOZEN店主 井上和洋氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

“彼はきっと自らが自然の一部として、
自然のサイクルに参加することに決めたのだ”

新潟県 Restaurant UOZENカトラリー | SUBARU グランドツーリングNIPPON
「冬のジビエが終われば、春の山菜や川魚が主役になります」。
井上氏が教えてくれた。 
「その頃にまた来ます」。私は気負いもなく応えた。 
店を出ると雨が降っていた。これまで感じたことのない心身に満たされた私には、その雨すら優しく感じた。
余韻は長く続いた。帰路についた車中、こう思った。「再訪の約束は、間違いなく果たされることになりそうだ」。 
何しろ今からもう、次の季節が待ち遠しいのだから。
新潟県 雨がより艶やかさを際立てるレヴォーグのエクステリア(アイスシルバーメタリック) | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

Restaurant UOZEN
新潟県三条市東大崎1-10-69-8
TEL:0256-38-4179     
URL:http://uozen.jp
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