日本三景・天橋立の眼前の宿。
その美しい温泉宿は私に
京都の美しさの秘密を伝えた。

2022.09.16 | #61 Kyoto Touring /Day3:STAY「ワインとお宿 千歳」

京都府北部を車で旅しながら、私はずっとひとつの疑問を抱いていた。それは「京都の美しさの本質は何か?」というシンプルだが奥深い問いだ。
たとえば深い山道に分け入っても、のどかな里山を走っても、まるで南国のような白砂のビーチを走っても、常に「京都らしい美しさ」が感じられたのだ。私はそこに共通する「京都らしさ」の理由が知りたい。
今夜の宿に定めた『ワインとお宿 千歳』になら、そのヒントがあるかもしれない。なにしろこの宿は、日本三景のひとつであり、京都を代表する景勝地でもある天橋立の目の前にあるのだから。
京都府 宮津湾に浮かぶ日本三景「天橋立」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

天橋立は、京都北部の宮津湾にあり、幅約20m〜170m、長さ3.6kmに渡り続く砂州。約6,700本の松が生い茂る。

宿のある宮津市に入ったのは、夕方前だった。サイドウインドウの向こうには、天橋立が見えている。まるで橋のように細い砂州に見事な松が生い茂る絶景。人工物にも見えるが、百人一首にもその美しさが詠われることを思えば、古くから変わることのない天然の造形なのだろう。
宿の住所を入力したカーナビに従い、車を走らせる。遠くに見えていた天橋立が徐々に近づき、ついには全貌が見えないほど接近してしまった。そこが目指す『ワインとお宿 千歳』だった。大げさではなく本当に目の前に天橋立を臨む立地だった。
京都府 深い霧に包まれた山の麓を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

京都府北部をレヴォーグで走る。山に囲まれた地域で、深い霧に包まれることが多いが、それもまたこの地の美しさを醸す。

京都府 『ワインとお宿 千歳』の外観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

『ワインとお宿 千歳』の外観。創業は今から約340年前の1680年にまで遡る。

駐車場に車を停めて、荷物を下ろす。
案内された部屋は、窓から天橋立を見下ろす絶景だ。歴史上の人物たちがその美しさを詠い、今なお日本中に名を轟かせる景勝地。その眺めを至近距離から独占する。なんと贅沢な眺めだろう!
案内してくれたスタッフによれば夕食は18時から。温泉を満たした風呂の準備もすでにできている。夕食までの時間、ぶらりと天橋立を散歩するのもおすすめとのことだ。どの提案も魅力的だったが、私は窓際に置かれた椅子に座り、ただこの景色を眺めることにした。少しずつ日が傾き、松の木の影が長くなる。その時間の流れを、私は心地よく堪能した。
京都府 『ワインとお宿 千歳』の内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

客室はベッドの置かれた洋室。モダンな設えだが、随所に長い歴史を感じさせる建材が残る。

京都府 『ワインとお宿 千歳』の内観 客室からの眺望 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

客室からの眺望。目の前は天橋立、左には天橋立と陸地を結ぶ廻旋橋が見える。

京都府 『ワインとお宿 千歳』 桶風呂と露天風呂 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

高野槇の桶風呂と桧の露天風呂には、美人の湯として名高い天橋立温泉が満ちる。

夕食の時間になり、私は上着を羽織ってダイニングに向かった。
考えてみれば、『ワインとお宿 千歳』と、宿よりも先にワインを冠しているのだ。ワインとともに味わう食事は、この宿の見どころのひとつなのだろう。
スタッフに尋ねてみると、この宿は近隣にある『天橋立ワイナリー』を経営しているのだそう。そういえばこの宿に向かう途中、一面のブドウ畑の中に建つワイナリーを見かけた。厳選したワインとワインに合う料理を、景勝地の目の前で愉しむオーベルジュ。それがこの『ワインとお宿 千歳』なのだ。
しばし食事を愉しむ。途中で料理の説明に来てくれたシェフは、与謝野町の料亭で8年間料理長を務めたという人物。この地の食材を知り尽くし、そして料理をワインに歩み寄らせる技術も併せ持つ。この名宿の厨房を仕切るのにふさわしい人物だ。
京都府 『ワインとお宿 千歳』ディナー締め「手打ち蕎麦」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

肉締めには伊根町筒川産の手打ち蕎麦。香り高い二八蕎麦が、心地よい余韻を残す。

京都府 『ワインとお宿 千歳』料理長の山本哲生氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

料理長の山本哲生氏。地元食材への深い知識が、ワインと寄り沿いつつ印象に残る料理を生む。

さらにしばらくすると、壮年の人物がテーブルにやってきた。この宿の当主であり、『天橋立ワイナリー』のオーナーでもある山崎浩孝氏だった。勧められたワインを味わいつつ、山崎氏と話をする。
聞けば山崎氏は、この宿の13代目の当主。いきなり飛び出した途方もない歴史に、改めて京都の奥深さを思う。だが続く山崎氏の話に、さらに驚かされる。
「ワインが好きだったから」
そんな理由で、北海道へワイン造りを学びに旅立つ。10年間の修業を経て京都に戻ってくると一面の田んぼだった土地に、ブドウの苗木を植え始めた。1995年に思い立った壮大な事業、ワイナリーが形を成したのは6年後の2001年。さらに340年の歴史を持つ家業の宿を、ワインのおいしい温泉オーベルジュへとリニューアルする。なんと挑戦的で、激動の人生だろうか。
京都府 『ワインとお宿 千歳』オーナーの山崎浩孝氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

オーナーの山崎氏。ワイン好きが高じ、ワイン輸入会社も立ち上げて海外から上質なワインを輸入している

山崎氏との会話を愉しんでいると、天橋立から花火が打ち上がった。天橋立名勝100年、特別名勝70年を記念した花火で、7月から10月の間の計14日、5分間で75発の花火が上がるのだという。短時間の花火ではあったが、花火に浮かび上がる天橋立のシルエットは、どこか風流で美しい。
そして私は、考える。
京都の風景が美しいのは、そこに美しくあろうとする美意識があるからではないだろうか。そしてその美意識は、京都という土地への誇りが支えているのではないだろうか。
ただ歴史があるから、ただ自然が豊かだから美しいのではない。そこに長年人が暮らし、思いを受け継ぎ、より良いものを生み出そうと挑戦する。その心こそが、世界に誇る京都の美しさの根源だ。
こうして天橋立の名宿での滞在は、私の中の疑問へのひとつの答えをくれた。明日はさらに北を目指し、京丹後か伊根の方へ向かってみよう。そこでもまた、京都らしい美しさが私を迎えてくれることだろう。
京都府 「光のアトリエ」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

2022年7月〜10月のイベント「光のアトリエ」のひとつとして、海中に沈めたライトが灯る光のアートも行われていた。

DATA

ワインとお宿 千歳
住所:京都府宮津市文殊472
TEL:0772-22-3268
URL:http://www.amanohashidate.org/
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