自然とともに生きるから
きっと人も自然体になる。
里山の暮らしが私に教えた大切なこと。

2022.10.07 | #64 Kyoto Touring /Day6:Experience「田歌舎」

初めて京都府北部を旅した私は、深い山と豊かな緑に囲まれる、知らなかった京都を知った。そこに暮らすのは、自然を身近に感じながら、自然とともに生きる人々。車で走り抜ける里山の家々に、サイドウインドウから見える田畑に、そんな豊かな暮らしが垣間見える。
しかし、ただ通り過ぎるだけの旅人である私には、その暮らしの本質を体験することはできない。
だから少しでも山の暮らしに近づくため、私は「里山体験」なるものに申し込んだ。京都・美山にある『田歌舎』は、自給自足で暮らしながら、レストラン、宿泊、自然体験などを提供する施設だ。
半日程度で、この地の生活を知ることはできないだろう。しかし体験することは、ただ聞くこと、見ること以上の気付きを私に与えてくれるはずだ。
美山は、京都北部への玄関口。
森は深く、川は澄んで、空は広い。目指す『田歌舎』への途上には、茅葺き屋根の建物が並ぶ一帯があった。車を停めて、しばし眺める。江戸時代から明治時代にかけて建てられた建物が残るこの地は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され『美山 かやぶきの里』として親しまれているという。古くから、自然とともに人が生きてきた場所なのだろう。
『かやぶきの里』からさらに山道を進むこと10分ほど。
ようやく『田歌舎』に到着した。
京都府 深い山の間を切り開いた田舎道を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

『田歌舎』へ向かう道。深い山の間を切り開いた、日本の原風景ともいえる里山が広がる。

京都府 『かやぶきの里』の側を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

『かやぶきの里』は50戸のうち39戸が茅葺き屋根で、多くが江戸時代から明治時代にかけて建てられた建物。

山を切り開いたような土地に小屋が10棟ほど。小川や動物の小屋に、広い畑も見える。
出迎えてくれた代表の藤原誉さんによれば、田畑だけで1.3ヘクタール。10棟以上ある建物はすべてセルフビルドだという。
建物を建て、米や野菜を育て、獣を狩りをする。水は山から勾配を利用して引き込み、高低差だけの圧力で一切電力、燃料を使わないシステムで施設内の水道を回し、鶏は屠殺して食料にする。可能な限り自給自足で成り立つ施設。それがこの『田歌舎』だ。
「いくら環境問題を考えたところで、都会で暮せば消費側でしかない」
そんな想いで山を切り開き、田畑を耕し、家を建てた。22歳で美山に移り、28歳でこの土地を手に入れ、今年で50歳。人生の半分以上を、この里山で過ごしていることになる。
だが、そんな話を聞いてもなお押し付けがましく、説教じみてこないのは、藤原さんがいたって自然体でいるからだろう。
「サラリーマンになれなかっただけだよ」
藤原さんはそう笑った。
最初は少し無愛想な人物に見えていたが、話すごとにその人柄の温かさがにじみ出る。それは、ここで働く若いスタッフたちと藤原さんとのやりとりを見ていてもわかる。経営者と従業員、上司と部下といった関係ではなく、スタッフたちは皆、藤原さんを“頼れる兄貴”のような存在として捉えているようなのだ。
京都府 『田歌舎』の代表・藤原誉さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

『田歌舎』の代表・藤原誉さん。大阪・枚方で生まれ、かつてはミュージシャンを目指していたという。

京都府 『田歌舎』特徴的な八角形の建物 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

ひときわ目を引く八角形の建物は、昼は予約制レストラン、夜は宿泊者の食堂として利用される。

京都府 2階建てのセルフビルドの建物 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

2階建ての建物もセルフビルド。藤原さんは大工の修業もして、本格的に建築を学んだ。

京都府 『田歌舎』野菜を育てる畑 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

100種ほどの野菜を育てる畑は、可能な限りの無農薬。堆肥の集積所をつくり完全無農薬栽培への移行も目指す。

京都府 『田歌舎』合鴨農法の稲作のための合鴨たち | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

合鴨農法の稲作のための合鴨たち。収穫して役目を終えた鴨は、食肉用として利用する。

トレッキングやラフティングから農業、狩猟、林業体験、鹿の解体や鶏の屠殺、もちろん食事や宿泊も。ここでは、実にさまざまな体験ができる。
「百の仕事ができるから、百姓」
そんな話が大げさではないほど、多彩な仕事をこなすのがここでの生活なのだ。
私は焚き火料理のプランをお願いした。それは生きた鶏を屠殺して捌き、焚き火で料理するという内容だ。日々、当たり前に口にしている鶏を、この地ならではの方法で体験してみたかった。
まずは薪を割り、火起こしの準備をしてから、鶏の解体がはじまる。
生きた鶏の首を切って血を抜き、湯につけながら羽をむしり、鉈で足を落として解体する。理屈としてはわかっていた。
だがその光景は想像以上に衝撃的で、正直にいえば少し辛かった。
「無理せんで休んでてええよ」
藤原さんは言う。
「向き、不向きがあるのは当たり前。みんな自分にできることをやれば良い。それで最後に、おいしく食べられれば良い」
京都府 『田歌舎』薪割りの様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

怪我をしないよう、足を開き、腰を落とすのが薪割りのコツ。

京都府 『田歌舎』屠殺された鶏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

鶏の屠殺や解体体験は、子どもでも参加可能。食育の一貫として多くの家族が訪れる。

京都府 『田歌舎』屠殺され、羽をむしとられた鶏の肉 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

羽をむしって、足を落とす。一連の作業を見て「命をいただく」ということを強く実感できる。

:京都府 『田歌舎』捌かれた鶏肉 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

解体された鶏。透明感ある身からは、美しささえ感じられる。

そして食事の準備が整った。
ほんの30分前まで生きていた鶏、目の前の畑で採れた野菜と米、調味料もほとんどが自家製。それを野趣あふれる焚き火で料理する。
解体はギブアップしてしまったが、料理はたまらなくおいしかった。ただ塩を振っただけの鶏がこれほどおいしいことを、焼いただけの野菜の味がこれほど濃いことを、羽釜で少し焦げた白米がこれほど甘いことを、私はこれまで知らなかった。
「おいしいでしょう?」
藤原さんの問いに、心から頷く。このおいしさの中に、本当にさまざまな学びが込められている気がした。自然の大切さ、偉大さ、サスティナブルの意味、食べるということ、生きるということ。それを言葉ではなく、体験として理解できた。そして何より、自分らしく、自然に生きるということも。
ここは、ただ農業体験やBBQができる場所ではない。
ここで体験するのは、自分が選ぶことがなかった生き方だ。
自分が知らなかった生き方を体感し、自分の生活を照らし合わせる。
何も“すぐに都会から離れよう”というのではない。ただここでの体験の豊かさを知ることで、自らの生活の意味や意義が、また違って見えてくるはずだ。そういう意味でここでの体験は、私のこれからの人生に大きな意味を持つのだろう。
京都府 『田歌舎』捌いた鶏肉と野菜を焼く様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

自ら割った薪で、捌いたばかりの鶏と採れたての野菜を焼く。シンプルだがこの上なく贅沢な食事。

京都府 『田歌舎』羽釜で炊かれたお米 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

羽釜で炊く米。日本人の琴線に触れるような滋味深い味わい。

京都府 『田歌舎』野菜・鶏肉から全て自家製で作られた食事 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

テーブルの上のものは、調味料まで含めてすべて自家製。これが『田歌舎』の食事。

京都府 『田歌舎』の代表・藤原誉さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

自然体で、自らに正直で、いつも目標に向かって動き続ける藤原さん。都会に生きる大人こそ手本にしたい。

DATA

田歌舎
住所:京都府南丹市美山町田歌1-1
TEL:0771-77-0509
URL:https://tautasya.jp/
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