そこはまるで神話の舞台。
荘厳な山々と重厚な建築物の対比は
ただ走り抜けるだけで胸が震えた。

レヴォーグで旅する大分県の旅

2023.1.13 | #76 Oita Touring /Day1:DRIVE「明正井路 六連橋」「神原渓谷」「民宿 清流」

一部の名勝や名産が、その県のイメージを固定してしまうことがある。
大分県でいえば温泉がそれだ。別府、由布院、天ヶ瀬。全国に名を轟かせる名湯が多いからこそ、大分県は老若男女がのんびりとくつろぐ温泉郷のイメージが強かった。
だがこのドライブで大分へのイメージは上書きされた。歴史も文化もある。温泉は多彩だ。しかし私の目に映った大分を一言で言うなら、それは秘境だった。
大分県 上空から見た神原渓谷 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

祖母傾国定公園に指定される神原渓谷は紅葉や新緑の名所としても知られている

大分市街から南西にハンドルを切る。道は九州の内陸部へと、深く深く入り込んでいく。竹田市に入り、さらに南へ。やがて景色は見渡す限りの山になる。遠くの山は霧に霞み、近くの山は色が濃い。そのグラデーションが幾重にも重なるスケール感に「ここは本当に日本なのか」という気分が湧き上がる。
道路脇に、まるでローマの遺跡のような石橋が見えた。
駐車場に車を停めて、眺めてみる。案内板によれば「明正井路 六連橋」という名のこの橋は、大正8年(1919年)に完成したという水路橋としては日本唯一の六連橋だという。たしかに石はかなり古びているが、風雨にも揺るがない重厚感がある。先人の偉大さが伝わるような、胸に響く建造物だ。
大分県 緒方川に架かる明正井路第一拱石橋「六連水路橋」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

奥に見える石造りのアーチ橋が明正井路 六連橋

車に戻り、さらに南へ。
やがてカーナビに「神原渓谷」の文字が見えた。
事前に調べた情報によれば、ここは神原川に沿って深いV字型の渓谷が9kmにも渡って続くという。ちなみに神原は「こうばる」と読むらしい。そのどこか荘厳な地名とともに、目の前の景色はまるで神話の世界の舞台のように私の目を愉しませてくれた。
大分県 民宿 清流 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ
大分県 神原渓谷大橋を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

神原渓谷大橋は山間地などの架設に使われるロアリング工法の橋のなかで日本最大級

道は橋に差し掛かった。「神原渓谷大橋」だ。
深い渓谷の上をまたぐ美しいアーチ。後続車を確認しつつ、少しアクセルを緩める。深い渓谷の上にいるという恐怖感よりも、圧倒的な絶景への感動が勝る。教場から望むのは日本百名山のひとつである祖母山の威容。
この祖母山の“祖母”とは、日本の初代天皇とされる神武天皇の祖母のことだという。建国の神話の舞台だ。現代工学の結晶であるこのコンクリート製のアーチ橋さえ、まるで伝説の神々の偉業にみえてくる。
感動の余韻に浸りながらハンドルを握る。
周囲にぽつりぽつりと民家が見え始めた。神原の集落だ。しばらく大自然のなかを駆け抜けてきた目に、この生活感が新鮮に映る。
やがて道路脇の三角屋根の建物に「湯った里」との文字を見つけて車を停めた。「民宿 清流」という宿の施設の一部らしい。名前からして温泉施設だろうか。こんなのどかな場所で温泉に浸かれたら、どれほど幸せだろう! 神原の空気にもう少し浸っていたいと思った私は、詳細もわからぬまま声をかけてみた。
「民宿なんで、立ち寄り入浴やってないんですよ」
応対してくれた若い男性は、気の毒そうにそう言った。
それは残念。そんな私の気落ちが伝わってしまったのだろうか。男性はこう続けた。
「まあでもお湯張ってあるから、よかったら入っていってください」
申し訳なさはあったが、せっかくだからお言葉に甘えることにした。
湯は少しぬる目の、体に染み入るような名湯だ。窓の外には素朴で清々しい山景色。体の力が抜け、心が空っぽになる。なんて贅沢なひとときだろう。
大分県 「民宿 清流」の敷地内にある温泉の側に停まるレヴォーグ(セラミックホワイト) | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「民宿 清流」の敷地内にある温泉

大分県 「民宿 清流」の敷地内にある温泉 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

木の風呂桶は年季が入っているが丁寧に管理され心地よい

湯上がりに先程の男性、ここの主人である阿南太二さんに声をかけた。
お茶をいただきながら、話をする。聞けば阿南さんは祖父母が営んでいた民宿を二代目として継いだのだという。
「子どもの頃からずっと見てきた風景。なんとも思っていませんでしたが、都会に出てみてはじめて、この自然の素晴らしさに気づきました」
そう話す阿南さんは、料理人。福岡のフランス料理店で腕を磨き、本場フランスでも修業を積んだ本格派だ。その料理の技術を持ち帰り、祖父母との思い出が宿るこの民宿で腕を奮っている。この秘境にやってくる客の大半は、登山客。阿南さんはその状況を少しでも変えていきたいと願っていた。
「おいしい料理を食べて、温泉に浸かって、あとは何もしない。そんな時間の使い方が贅沢だと思われちゃう時代。でも贅沢をするためではなく、心を休めるために、ぜひ遊びにきてください」
聞いているだけで阿南さんのこの場所への、そして祖父母への愛が伝わってきた。民宿は受け継いでからも、可能な限り何も変えずにいるという。「変えるのは簡単。守るほうが難しい」という言葉にも、祖父母への敬意と愛が詰まっていた。
大分県 「民宿 清流」のオーナー兼料理人 阿南さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「ここは料理人にとって宝の山」と阿南さん。周辺の食材を使用したフランス料理は宿泊客に好評

大分県 「民宿 清流」客室 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「民宿 清流」は1日2組限定。田舎の親戚を訪ねたような穏やかな時間が愉しめる

大分県 「民宿 清流」に飾られるオーナー兼料理人の阿南さんと祖父の写真 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

壁には祖父と幼い阿南さんが映った写真が飾られていた

次は宿泊しに来る約束をして阿南さんと別れ、車に戻る。
行く先にはまだ、幾重にも山々が連なっている。大分の秘境、神原。そこでの発見や出会いを胸に、私はアクセルを踏み込んだ。この先でもきっと待っている、まだ知らない日本の姿に胸を高鳴らせながら。
大分県 神原の道路を走るレヴォーグ(セラミックホワイト) | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

路面状況が良く、走りやすい道が続くのも神原の魅力のひとつ

DATA

民宿 清流
住所:大分県竹田市神原1925
TEL:0974-67-2612
URL:https://www.facebook.com/minsyukuseiryu/
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Oita

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