車でしか行けない山中の秘湯。
自然の中で湯に浸かる贅沢と
秘湯を守るある外国人の熱意。

レヴォーグで旅する大分県の旅

2023.1.27 | #79 Oita Touring /Day4:EXPERIENCE「赤川温泉 赤川荘」

大分県 | 赤川温泉 赤川荘 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ
見渡す限りの山々が広がる道、ゆるやかなカーブで高原を抜ける道、どこまでも続くような一直線の道。久住高原には走り甲斐のあるドライブルートが多い。
その日も私は久住高原の周遊道路を走り、駐車場に車を停めて一息ついていた。そのときふと、風の中にかすかな硫黄の香りが含まれていることに気づいた。風上を見ても、ただ山が広がっているだけ。しかしきっとそちらの方に匂いの出どころがあるのだろう。好奇心を刺激された私は、車に戻って風上へとハンドルを切る。明確な目的があったわけではない。ただ匂いをたどって目的地を決める、という原始的な行動に、なんだかワクワクしてきたのだ。
大分県 霧がかった久住高原のドライブウェイを走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

久住高原のドライブウェイ。見晴らしは良いが、霧に包まれることも多い。

しばらく走っていると、道沿いの看板に「赤川温泉」の案内が見えた。案内に従い、細い山道へと進むとやがて目の前に山荘風の建物が見えてきた。看板には「赤川温泉 赤川荘」とあった。
車を降りると、濃密な硫黄の匂いに包まれた。先程、風の中に感じた匂いの元はここで間違いなさそうだ。建物の前の汲み場には乳白色の温泉が湧き出している。湯の流れた場所は、石膏のように白いものが固まっている。よほど濃厚な成分を含んだ温泉なのだろう。掬って口に運んでみると、なんとも言えぬ味がした。酸味のような苦味のような不思議な味と、鼻に届く濃厚な硫黄の匂い、そしてかすかな炭酸。決してまずいわけではないのだが、なんともインパクトのある味だ。
大分県 山道を走るレヴォーグ(セラミックホワイト) | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「赤川温泉」の看板に従い山道へ。自然の中に分け入るような感覚が心地良い。

大分県 赤川温泉の入口前にある汲み場 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「赤川温泉」の入口前にある汲み場。「遠くから来て頂いた感謝を込めて」と無料で汲むことができる。

受付で尋ねてみると、ここは日帰り入浴専用の施設だという。
かなり標高が高いのだろう。息が白くなるほど寒い。私はこれ幸いと受付を済ませて温泉へと向かった。
脱衣所の先は、内湯だった。野趣あふれる石造りの湯船と、木枠の大きな窓。洗い場も湯船も清潔で気持ち良いが、長年の歴史を積み重ねた重厚感もある。
もうもうと漂う湯気の中、湯舟に体を鎮めると少しだけ熱めの湯が冷えた体に染みた。とろみのある乳白色の湯が、体の芯まで温めてくれる。なんと心地良い温泉だろう。
体が温まったところで、露天に移動してみた。目の前には川が流れ、その向こうに滝が見える。作り物の長めではなく、本当の山景色を眺めて浸かる温泉だ。
湯船はいくつかに区切られていた。
手前のひとつに入ってみると、適温の湯が素晴らしい。外気温が低いため頭は冷えていて、肩まで浸かった体はポカポカと温かい。この感覚こそ、露天風呂の醍醐味だ。
次いで奥側の湯に移動してみた。こちらは水のような温度だった。案内表示に冷泉を加温しているとの説明があったので、こちらは湧き出したままの温度なのだろう。せっかくなので、震えながら思い切って浸かってみる。内湯と露天風呂でしっかりと温まっていたため、この冷たさは意外にも心地よかった。2〜3分浸かってから再び温かい湯に戻ると、じわりと緊張が解けるような感覚。この温冷交互浴も、ここならではの愉しみなのだろう。
大分県 赤川温泉 内湯内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

湯気が立ち込める幻想的な雰囲気の内湯。

大分県 赤川温泉 露天風呂と名勝 飛龍の滝 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

露天風呂からは自然を一望。奥の滝は「飛龍の滝」と呼ばれる名勝。

温まっていると何度か、スタッフが湯温を測っていた。丁寧に、慎重に温度を調整しているのだろう。声をかけてみると、彼がここの社長である朴 賢眞(パク ヒョンジン)さんだった。日本語は堪能だが、外国出身の方だという。温度を見る真剣な姿に興味を惹かれ、湯上がりの休憩所でもう少し話を伺ってみた。
朴さんは、韓国出身。大邱市で働いていたとき、留学に来ていた赤川温泉の先代の娘さんと知り合い、国際結婚をした。それからもしばらく韓国で働いていたが、長期休みの時期などに何度もこの温泉を訪れるうちにその魅力に惹かれ、13年前にこの地に移ったのだという。その理由はシンプルに「ここが大好きだから」と朴さん。
この赤川温泉の標高は1,100m。車で行ける温泉としては、九州でもっとも高地にあるという。その歴史は古く、鎌倉時代に軍事演習中の武士によって偶然発見されたもの。露天風呂から見える滝も、修験道の修業の場として古くから知られているのだとか。歴史があり、そのままの姿の自然があり、乳白色の温泉がある。
「日本に来て、外国人の目線でいろいろな温泉地を巡りましたが、これほど自然そのままの温泉は見つかりませんでした」
朴さんはそう胸を張った。
3年前の水害で、温泉の一部も押し流され、景観も大きく変わってしまった。しかし古くからのファンたちが応援に訪れてくれたおかげで、復旧は早かったという。
「これほど多くの人に愛されている温泉ですから、大切に守っていきたい」
そんな朴さんの言葉が胸に残った。
温泉で温まった体は、いつまでもポカポカだった。それはあの乳白色の湯の効能だけではなく、この地を愛し、大切に守る朴さんの心に触れたからかもしれない。
大分県 露天風呂と社長の朴 賢眞(パク ヒョンジン)さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

社長の朴さん。この温泉を使用した石鹸などの販売も手掛けている。

DATA

赤川温泉 赤川荘
住所:大分県竹田市久住町大字久住4008-1
TEL:0974-76-0081
URL:https://akagawaonsen.webnode.jp/
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Oita

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