絶景を見渡す、4mの樹の上の
キャンプ場。
知識として得ることと、体験することの違いを、
私は身をもって学んだ。

2021.11.25 | #8 Niigata Touring /Day8:EXPERIENCE「星峠宿」
かの有名な星峠の棚田。
これまでテレビや雑誌で繰り返し目にしてきた。朝靄に煙る情景も、柿色の夕焼けも、紫の残照に照らされる日没も。まるで訪れたことがあるかのように、その景色は私の目に焼き付いている。 
だからこそ少しの不安もよぎる。果たして実際に訪れてみたら、何か変化はあるのだろうか。すでに知識として見知っている以上の驚きはあるのだろうか。
新潟県 十日町星峠茶屋の外観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
星峠に、1日1組限定のツリーキャンプ施設ができたという。あの美しい景色を眺めてコーヒーを飲み、食事を食べ、眠りにつき、目覚めたら、それはどれほど素晴らしい体験だろう。そう期待する反面、あまりに予備知識を入れすぎてしまったため、感動が薄れてしまうのではないか、と不安になったのだ。
車は十日町の市街地を過ぎる。徐々にコンクリートはまばらになり、肩を寄せ合うように集まる集落がぽつりぽつりと見え始める。目的地に程近い松代と呼ばれる地の集落。家の軒先をかすめるような道に、誰かの家にお邪魔したような気分を感じながら、車は進む。そして星峠に到着した。
新潟県 十日町星峠の棚田米の新米 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 十日町星峠の棚田米 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
結論をいえば、心配は取り越し苦労だった。
高台から見渡す一面の棚田。匂いがあり、音があり、肌に触れる空気がある。誰かが撮影した写真だけではわからない圧倒的なリアル。「旅をしている」という感慨が胸に押し寄せる。
新潟県 十日町市棚田を一望 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

“誰かが撮影した写真だけではわからない
圧倒的なリアル。
「旅をしている」という感慨が胸に押し寄せる”

受付に訪れた『星峠宿CHAYA』で、施設のオーナーである粂井貴志氏と話しができた。区画まで案内され、設営を手伝ってもらう間も、話は続く。
「守るとか、遺すとかの前に、この場所が好きなんです」。
そう粂井氏は言った。彼はこの土地の出身ではない。学生時代の同級生にここ出身の友人がいた縁で訪れてみて、惹きつけられたのだという。 
「しかし山間で代々続くこの地に、外部の方は簡単には受け入れられなかったのではありませんか?」。

 私の疑問に粂井氏は笑う。 
「もちろん簡単ではありませんでした。最初の数年は“自分がここで何をやりたいか”ではなく、“自分がここのために何ができるか”だけを考えていました」。
粂井氏の話を通して、ますますこの場所が好きになっていった。
新潟県 十日町星峠宿オーナー粂井貴志氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 十日町星峠宿ツリーハウスからの景色 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 十日町星峠宿ツリーハウスの外観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 十日町星峠宿ツリーハウスの内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
観光地として脚光を浴びた星峠の棚田だが、ここはあくまで地元住民の生活の場。年々増加する観光客に困っている部分もあったという。実は駐車場も公衆トイレも整備された道路も、すべて地元の方の土地を切り取って利用しているという。道路の整備やトイレの清掃をしても、地元には一銭の収益にならぬばかりか、手間ばかりがかかる。その解決策を次々に提示するうち、やがて粂井氏は集落に受け入れられていった。今ではこの棚田に土地を持ち、米も育てる。いわば正式に住人として迎えられたのだ。
話しながら粂井氏が、ツリーハウスのデッキへと導いてくれた。
「集落の人と話し合って、一番の絶景ポイントにツリーハウスを建てました」。
4mの木の上で目に飛び込んできたのは、日本の原風景のようでいて既視感のない、まっさらな里山の風景だった。 
「美しい」。それは間違いない。 
だが、それ以上に胸に迫るのは、この風景に今も血が通い、動き続けていることだ。300年前の先祖が開墾し、代々それを守り続けているという住民の誇りだ。記録画像ではなく、進行形で動き続ける生きた絶景だ。夕方は眼の前の棚田で収穫された新米を飯盒で炊いて夕飯にした。笑みが溢れるほど、おいしい。そして豊かだ。
新潟県 十日町星峠宿オーナー粂井貴志氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

“自分がここで何をやりたいか”ではなく、
“自分がここのために何ができるか”だけを
考えていました

12月に入るとここは4mもの雪に閉ざされる。キャンプ場も雪解けまで閉鎖となるという。そんな話をしながら、ふと粂井氏に尋ねた。
「ここで生きていて、一番好きな時期はいつですか?」。
粂井氏は少し考えて、応える。
「雪解けの季節ですね。さあこれからがんばろう、というやる気が湧いてきます」
新潟県 星峠宿に到着したレヴォーグ(アイスシルバー・メタリック) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
新潟県 日が落ちた星峠宿で佇むレヴォーグ(アイスシルバー・メタリック) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
自然とともに生きる豊かな暮らし。このキャンプ場での体験は、そんな遠い世界のほんの一端を垣間見せてくれた。
新潟県 十日町星峠の雄大な景色 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

星峠宿
新潟県十日町市峠728
TEL:025-594-7600     
URL:https://hoshitoge.jp
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