大分の山間の小さな豆腐屋。
その濃厚な味わいの奥に垣間見た
職人の熱意と家業への誇り。

レヴォーグで旅する大分県の旅

2023.2.17 | #83 Oita Touring /Day8:EAT「郷豆腐店」

大分を旅していたある日、竹田市内の店で夕食を摂った。
そこでとくに考えもなく注文した厚揚げ。その香ばしさと大豆の風味があまりにおいしく、思わずメニューを見返してみた。そこには「郷豆腐店 名水油揚げ」と書かれていた。
検索してみると、「郷豆腐店」は竹田市街から15kmほど北上した山間にあるらしい。私の次の日の予定は、こうして決まった。
大分県 神社から見える田園風景の間を走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

のどかな田園風景が広がる「郷豆腐店」がある集落。

翌日、さっそく車に乗り込んで北を目指す。
最短ルートの県道47号線は、田畑と山景色を眺めながら走るのどかな道だ。集落を通り過ぎ山道に入り、またしばらく走ると小さな集落がある。そんなことを繰り返しながら進むと、やがて道沿いに湧水の水汲み場が見えてきた。平日にも関わらず何人かが持参のボトルに水を汲んでいる。きっと地元で有名な名水なのだろう。そしてその水汲み場の向かいに、小さな豆腐店があった。ここが目指した「郷豆腐店」だ。
大分県 「郷豆腐店」外観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「郷豆腐店」。50年以上続く歴史のため、小さいなかに風格さえ感じる佇まい

大分県 「郷豆腐店」の畑の中から湧き出る「籾山湧水」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

畑の中から湧き出す「籾山湧水」は、ほのかに甘く、柔らかい軟水。

なんの変哲もない、小さな豆腐屋だ。
年季の入った建物で、かなり古くから続いているように見える。ほかに違いといえば、店の前に小屋があり、買った商品を食べられるようになっているくらい。店内には豆腐や油揚げのほか、豆乳でつくるスイーツなども並べられていた。豆腐は柔らかいものと硬いものがあるようだ。
私は硬い方の豆腐を選び、向かいの小屋でいただくことにした。せっかくだから湧水を汲んで一緒に味わってみよう。
まずは何も付けずに、豆腐をひと口。
なんとうまい豆腐だろう! 私は、この店を訪れようと決めた私の直感を褒めたくなった。とにかく大豆が濃厚だった。噛むと口の中で砕ける硬めの食感で、噛むごとに力強い大豆が主張する。しかし、それほど濃厚でありながら、クリアな清涼感もあるのだ。水の良さがはっきりと感じられる、素晴らしい豆腐だ。
大分県 「郷豆腐店」の豆腐 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「郷豆腐店」の豆腐(硬め)。しっかりした食感で、豆腐ステーキなどの料理にもぴったり。

大分県 「郷豆腐店」の「籾山湧水」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

水は無料でいただけるが、汲む前にまず水神様にお参りを。

大分県 | 郷豆腐店 | 祖母山トレッキング | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ
感動冷めやらぬ私は、店にいた青年に話を聞いてみた。彼がここの店主である郷 健太郎さんだった。
「祖父母が始めた豆腐屋。味もパッケージも50年前のままですよ」
おいしさの感動を伝えても、控え目な郷さんは静かにそう答えるだけ。何か秘密があるのではないか、と勘ぐっても「きっと水が良いのでしょうね」と笑う。
それでも話を続けるうちに、職人としての誇りが垣間見えた。
子どもの頃から豆腐屋を営む祖父母を見てきたという郷さん。
毎日早朝から続く重労働を見ながら「豆腐屋にだけはなりたくない」と思ったそうだ。しかし、一度は別の仕事に就いたものの、今では立派な豆腐職人。毎朝3時に起きて、3時半には店で仕込みに入る。
大豆を湧水に浸し、石臼で挽き、湧水を加えて絞って濃厚な豆乳をつくる。そこににがりを加えて豆腐が完成するまで、毎朝3〜4時間の作業。完成したら竹田市内の旅館などの朝食に間に合うように配達する。
「ずっと続いてきたものだから、変えずに守るだけ」
そんな言葉にも、家業への熱い想いが潜んでいるようだ。
大分県 「郷豆腐店」店主 郷健太郎さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

物静かな雰囲気の郷健太郎さん。市街地で勤め人をしていたが、奥様の香織さんとともに祖父母の跡を継いだ。

変えずに守るものがあれば、新たに生まれるものもある。
冷蔵庫の中に並ぶスイーツ類がそれだ。担当するのは郷さんの奥様の香織さんと、お母様の喜代美さん。 そんな話をしているとき、ちょうど喜代美さんが揚げたてのドーナツを持って通りかかった。
「これ揚げたてだから食べてみて! やけどしないようにね!」
物静かな郷さんと対照的な、賑やかな喜代美さんの声に誘われるままに、熱々をかじってみる。上品な甘み、香ばしさ、大豆のうまみ。ただ片手間につくったのではなく、開発のためにしっかり研究されたことがわかる、素晴らしい味だ。
大分県 「郷豆腐店」の揚げたての豆乳ドーナツ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

揚げたての豆乳ドーナツは、ほんのり甘く、優しいおいしさ。

大分県 「郷豆腐店」店主 郷健太郎さんと妻・香織さん、母・喜代美さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

妻・香織さん、母・喜代美さんとともに。

まだいろいろ味わいたかったが、硬い豆腐とドーナツは思った以上にお腹を満たした。お土産にいくつか買って、店を後にした。
大分県の山奥の竹田市の、さらに奥の方にある小さな豆腐店。ここに足を運び、造り手と話し、できたてを味わったこと。そんな一期一会の出会いこそが、旅の愉しさだと改めて感じた。
大分県 籾山八幡神社への道を走るレヴォーグ(セラミックホワイト) | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

籾山八幡神社への道。巨木に囲まれた神聖な雰囲気の場所だった。

帰り際、郷さんに教えられて八幡神社にお参りをした。
鬱蒼と木々が茂る静かな境内に、この地の豊かさを想う。この自然と水とあの豆腐の味がいつまでも変わらずにいてほしい。神社に手を合わせながら、私はそんなことを願った。

DATA

郷豆腐店
住所:大分県竹田市直入町長湯社家(籾山湧水前)
TEL:0974-75-2536
営業:8:00~18:00(売り切れ次第終了)
定休日:水曜
URL:https://r.goope.jp/sr-44-442081s0011
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Oita

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