Gears of SUBARU

クルマを動かすギヤ一つ一つに光を当てるように、
SUBARUとSUBARUのクルマを形成する様々な活動や人を
ピックアップしお伝えしていきます。

VOL.03 エンジニアのための空間として生まれた、
SUBARUのAI開発拠点地
SUBARU Lab

ステレオカメラによる認識と制御によって、クルマや歩行者、白線などを識別し、安全運転のサポートをするSUBARUの運転支援技術「アイサイト」。そんなアイサイトの新しい開発拠点として、2020年12月東京・渋谷に設立されたのがSUBARU Lab(スバルラボ)です。エンジニアのための空間として生まれたSUBARU Labはいったいどんな場所なのか、そしてこれまでにないシェアオフィスという環境でどのように働いているのか、今回は実際にSUBARU Labで勤務されている林 正裕さんと坂本 將馬さんにお話を伺いました。

林 正裕(はやし まさひろ)
林 正裕
(はやし まさひろ)

2012年に株式会社SUBARUに入社。2017年まで群馬本工場にて設計エンジニアとして、アイサイトのシステム設計に携わり、その後東京事業所に異動し認識ソフトウェア開発のPMに携わる。SUBARU LabのPM業務を2020年から担当。

坂本 將馬(さかもと しょうま)
坂本 將馬
(さかもと しょうま)

2019年に株式会社SUBARUに入社。入社以来、ADAS※1開発部に所属。SUBARU LabではComputer Visionチームで、カメラやセンサーを用いた地図作成を行うローカリゼーション業務を担当している。熊本県出身で、学生時代はクルマの自動駐車についての研究を行っていた。

※1 ADASは、Advanced Driver-Assistance Systems,先進運転支援システムの略称。ADAS開発部ではアイサイトなどの先進運転支援システムの開発を行っている。

ビットバレーと呼ばれる渋谷で、イノベーションを起こす

SUBARU Labとはどのような場所で、どのような人たちが働いているのでしょうか。

「2020年12月にAI開発拠点として、渋谷に設立したSUBARU Lab(スバルラボ)。SUBARU Labでは「2030年、死亡交通事故ゼロ※2」を目指して、AIを活用したアイサイトや自動運転の研究開発を行っています。SUBARU Labには、これまで群馬の本工場や三鷹の事業所でアイサイトの開発を行っていた者をはじめ、AI、画像認識、自動運転の制御などあらゆる知見を持ったメンバーが集まっており、20代の若手から40代のマネージャーまで、働いている人の年齢もさまざまです。」(林)

※2 SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車等の死亡事故ゼロを目指す。

林 正裕(はやし まさひろ)

SUBARUのオフィスは、東京・恵比寿や三鷹、群馬にもありますが、
なぜ新たに渋谷に設立することになったのでしょうか。

「渋谷は、ビットバレー※3と呼ばれており、大手IT企業が集まる場所です。「AI」という日々進歩する技術を使って研究開発を行うためには、社内だけでなく社外からの知見も得たいという想いがあり、高度IT人材が多く集まる渋谷にサテライトオフィスを設立することになりました。

2021年末には、アイサイトのデータを用いて先行車の速度を予測するアルゴリズムを作成する「SUBARU画像認識チャレンジ」コンペティションを開催し、画像認識・AIの分野で活躍する社外の人や企業との交流を深めました。技術進歩のためには外からの知見も取り入れていくことが、今後イノベーションを起こしていくためには必要となってくると考えています。」(林)

※3 ビットバレー:IT関連のベンチャーが集まる、東京都渋谷区とその周辺の通称。渋谷を「渋い(bitter)谷(valley)」と解したものと情報量の単位「ビット(bit)」を掛け、米国のシリコンバレーに倣って名付けられたもの。

SUBARUのオフィス

オフィスの近くには青山学院大学やショッピングモールなどがあり、平日でも多くの人々が行き交う。オフィスの目の前には首都高、そして周辺には入り組んだ一般道があり、AIを使ったアイサイトの研究開発を行う上でも渋谷はメリットの多い土地だという。3階にあるオフィスからは首都高が良く見える。

SUBARUのオフィス

AIの技術を活用して、“認知”を深める

SUBARU Labでは、どのようなチーム構成で、
どのような研究が行われているのでしょうか。

「SUBARU Labでは、AIそのものの開発を行う「Machine Learning」チーム、AIによる画像認識の研究を行う「Computer Vision」チーム、そして自動運転の研究を行う「AutonomousDrive」チームの3チームに分かれて業務を行っています。その他にも、CGを使ってシミュレーションを開発するチームや、それらを下支えするようなマネジメント業務を行うチームもあります。」(林)

Machine LearningAI開発を行う

Computer VisionAIによる画像認識の
研究を行う

AutonomousDrive自動運転の研究を行う

ADAS開発部は、大きく分けて「Machine Learning」「Computer Vision」「AutonomousDrive」の3つのチームに分かれて仕事が行われている。

アイサイトを開発するにあたって、AI技術はどのように活かされているのでしょうか。

「クルマの運転には「認知・判断・制御」の3つの段階があり、SUBARU Labで開発を行っているのは「認知」の部分。その「認知」の精度を上げるために、AIを活用しています。例えば、今後一般道での自動運転を実現していくためには、一般道の環境を学習していく必要があります。白線が無かったり、交差点があったり、多種多様な一般道路の環境をAIで学習することで、正しい進行方向を見つけやすいようになるのです。」(林)

SUBARU車のクルマの運転イメージ

SUBARU車の安全技術の未来について、
SUBARU Labではどのような役割を果たしていきたいですか。

「SUBARUでは約30年前から、予防安全技術アイサイトの研究開発を行ってきました。まずは、その予防安全技術を使って「2030年、死亡交通事故ゼロ」という目標を実現していきたいです。

2022年に発表された新型車に搭載しているアイサイトは、従来の2つのステレオカメラに超広角の単眼カメラが加わり、より広い範囲が認識できるようになりました。事故が起こる前に、危険をいち早く察知し、運転をサポートする、究極のぶつからないクルマを追求するのはもちろん、それがお客様にとって使いやすい機能であるかどうかも私たちは重視しています。どうしたらお客様が自然に、そして安全にお使いいただけるかを考え、今後も研究開発に励んでいきたいです。」(林)

エンジニアファーストなこだわりが詰まったオフィス環境

SUBARU Labが入っているのはシェアオフィスと伺っていますが、
どのような特徴があるオフィスなのでしょうか。

「SUBARU Labは「H1O(エイチワンオー)」というシェアオフィス内の一角にあり、SUBARU以外の企業も多数入居しています。ラウンジは共有スペースで、オフィスに入っている企業のスタッフであれば自由に利用できます。
SUBARU Labのエリアでは、一部場所を除いてフリーアドレス制を採用しています。コロナ禍に出来たオフィスであるということもあり、座席のほとんどは壁や窓側を向き、パーテーションが設置されています。また部屋にはそれぞれテーマが決められており、エンジニアがその日の気分によって働くスタイルを選べるのも特徴です。」(林)

SUBARU Lab「H1O(エイチワンオー)のイメージ

「SUBARU Labでは、エンジニアファーストな環境づくりに力を入れています。オフィスには、デスクワークの多いエンジニアが長時間作業しても疲れない椅子を揃えています。椅子は全部で4種類用意しており、SUBARU Lab設立の際にエンジニアたちに座りたい椅子をヒアリングし、厳選しました。モニターも数種類用意しており、メンバーそれぞれが自分に合うものを選んで仕事をしています。また、リモートワークも採用しており、出社の頻度も自身で決めることができます。」(林)

SUBARU Lab「H1O(エイチワンオー)のイメージ

オフィス入口の看板や廊下のライトなど細部にまでこだわりを感じられるオフィス空間は、まるでホテルのような雰囲気。ラウンジにはコーヒーメーカーや軽食コーナーがあり、オフィスで長時間過ごすスタッフがリフレッシュできる設備が整っている。ラウンジのある階には、貸会議室もありシェアオフィス内の企業であれば、予約して使用可能。

若手エンジニア・坂本 將馬さんの一日

SUBARU Labで実際に働いている坂本 將馬さんに密着!SUBARUの若手エンジニアはどのような1日を過ごしているのでしょうか。

具体的な業務内容について教えてください

「普段はComputer Visionチームで、SLAM(スラム)という技術を使って研究開発を行っています。SLAMは、Simultaneous Localization and Mappingの略称で、地図の中で自分がどこにいるのかを認識する「自己位置推定」と周辺環境を把握して「地図作成」を同時に行う技術のこと。カメラやセンサーで見た映像から「自動車」や「歩行者」の情報を認識し、通ったルート情報を基に地図作成を行うのです。私は車両でのデータ収集や、カメラの校正作業を担当しています。SUBARU Labには元々SLAMを専門に仕事をしてきた先輩やアイサイト開発のスペシャリストの方々が揃っているので、現在はその方々の業務をサポートしながら、日々勉強しています。」(坂本)

若手エンジニア・坂本 將馬さんの一日のイメージ

SUBARU Lab

株式会社SUBARUのADAS開発部の拠点。AI技術を活用した予防安全技術の研究開発を行っている。SUBARU Labは、エンジニア一人一人がその時々に応じて自分の快適なエリアを使い分けられるように設計されたエンジニアファーストな空間である。

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