WRX ヘリテイジ

PHOTO:2018ニュルブルクリンク24時間レース
挑戦と進化の歴史。
1993年8月、フィンランドで開催された世界ラリー選手権(WRC)1000湖ラリー。湖と針葉樹林を縫うグラベルロード(未舗装路)を200km/h以上で駆け抜ける屈指の高速ラリーで、華々しいジャンピングスポットが名高いイベントだ。WRXはデビュー戦にして堂々の2位でフィニッシュを果たし、一躍その名を世界に知らしめた。ネーミングの由来は、World Rally X。SUBARUが、走りで世界に挑むために開発したクルマであることの証である。
WRCは、世界各地の一般道を封鎖して開催され、車両はあくまでも市販車ベースとする競技。路面は、雪と氷、グラベル、ターマック(舗装路)、時には悪路も登場する。そのステージは、AWDテクノロジーと市販車のポテンシャルが問われる、いわばリアルなテストコースであり、SUBARUが挑む理由もそこにあった。
SUBARUは2008年シーズンまでWRCに参戦。WRXは、3度のマニュファクチャラーズチャンピオン(1995、1996、1997年)を獲得した。さらに3人のドライバーズチャンピオンを生み出すとともに、日本車最多勝利という栄光の軌跡を駆け抜けた。

PHOTO:2018ニュルブルクリンク24時間レース
モータースポーツで進化するというDNAは、その後ドイツ ニュルブルクリンク(NBR)で行われるレース参戦へと受け継がれた。NBRはコースの過酷さで知られるが、プロドライバーたちは天候が不安定であることを何よりも恐怖に感じるという。全長20kmを超える春先の山岳コースでは、ドライ、ウェット、スノーと周回ごとに予測不能な状況に陥ることも少なくない。それゆえテストコースとしても開放されるNBRは、世界のスポーツカーがこぞってテストを重ねる聖地でもあるのだ。
WRXの開発テストも1990年代から今日までずっと継続されている。だからニュルブルクリンク24時間レースに参戦し続けることは、勝敗以上にこのクルマの進化にとって極めて意義がある。WRX STIは2011年以降すでに6度のクラス優勝(2011、2012、2015、2016、2018、2019年)を果たすまでに進化し、量産車へのさまざまなフィードバックを実現している。