トピック

待望の新型フォレスターをデザインの進化から徹底解剖

カーデザイナー髙木曽太と巡る
新型フォレスター デザインクルーズ

メーカーを知る | 2025/05

カートピア フォレスター Premium S:HEV EX(クリスタルブラック・シリカ/リバーロック・パール )とデザインチームのリーダーを務めたSUBARUデザイン部の髙木曽太 | SUBARU

「見た目から安心感のある堂々とした佇まい」をテーマにSUBARU史上、最もデザインを優先して開発された新型フォレスター。デザインはどのようにして生まれたのか、エクステリアとインテリアに込められたこだわりはどこにあるのか。カーデザイナーが新型フォレスターのデザインの世界へと導く。

プロフィール

カートピア SUBARUデザイン部の髙木曽太 | SUBARU
髙木曽太 TAKAGI Sota

株式会社SUBARU 経営企画本部 デザイン部
車種開発プロジェクトチーム シニアデザイナー

2001年入社。7人乗りモデルのエクシーガ、クロスオーバーセブンなどのシートやトリム周りのデザインを担当し、6代目レガシィや北米市場で販売されているアセントでは内装部門のリーダーに抜擢。その後、新型フォレスターのデザイン全体を統括する現在のポジションに。学生の頃はエクステリアのデザイナーを志していたが、SUBARUに入社してからは、外装よりも触れる時間が長く、乗る人の気持ちにダイレクトに応えることができるインテリアデザインの魅力に気づき、内装デザイン一筋でキャリアを重ねてきた。

デザインコンセプトは
Ready for Adventure


今回のデザインは、遠くから見ても明らかに新しいフォレスターと分かるような大きな進化が求められました。フロントフェイスの変化感はもちろん、サイドから見たときにも全く違うクルマに見えるよう、先代モデルのスポーティで軽快な表現から、水平基調でどっしりとした安定感のある重そうな表現に大きく変更しました。SUBARUの中でいちばんファミリー層に選ばれるモデルですので、4人で乗っても快適な空間が広がっているように見えることも重要です。横から見たときに、先代モデルは前から後ろに向かってウインドゥが狭くなっていたのを、新型ではウインドゥエリアをフロントからリヤまで水平基調でしっかり確保しています。

これまでのSUBARU車の開発は「衝突安全で最高評価を獲得する」「0-100km/h加速を何秒にする」といった性能目標を第一に置いていました。デザインをスタートする時点で、その性能をクリアするために既に触ることができない領域もありました。新型フォレスターでは、これまでとの変化幅を大きくするために、デザインを優先する開発アプローチを採用しています。SUBARUのデザイナーは長年の経験で、性能が犠牲になるデザインのラインを把握しているので、自由にやってもいいよと言われても、自然とその制約を守ったデザインになりやすいので、いかに飛躍できるかは苦労した点です。

カートピア フォレスターを背景に、デザインを語る髙木さん | SUBARU

SUBARU車のイメージがある程度認識されている中で、変化が大きすぎると、「SUBARUっぽくないね」とお客さまもマイナスの印象を持ってしまいます。お客さまは、ただカッコいいからではなく「丈夫で衝突安全性が高い」「荷物がいっぱい積める」「悪路を走っても平気」といったクルマが持っている機能を重視し、それがデザインで表現されているからこそSUBARUを選んでいただいています。デザイン優先になったからといって、これまでSUBARUが大切にしてきた、機能性の高さをデザインで表現することは忘れていません。守りたいことを守りながら新しいデザインにチャレンジできたことは、デザイナーとしても苦労したぶん、愉しい経験でした。

カートピア フォレスターの横に立つ髙木さん | SUBARU

フロントフェイスは大きく変わりましたが、顔を隠して新型と旧型を並べても、ボディ全体のボリュームの付け方やプレスの表現の違いは2世代分くらいの進化が実現できたと思っています。デザイナーだけではなく、クレイモデラーやデジタルモデラーが競い合うように表現を高めていったからこそ実現できたのだと思います。デザイナーが描いた絵を受け取ったクレイモデラーは「絶対にデザイナーの絵よりカッコいいクレイに仕上げてやろう」とクレイモデルを削り上げます。クレイモデルを測定してデジタルデータを作るデジタルモデラーも「クレイモデルよりきれいな面で、クルマの狙いがはっきり出るようなデータを作ろう」と、各工程で知恵や工夫が入ってくるのがSUBARUのクルマづくりの特徴です。

他のメーカーに入社した大学の知り合いに聞くと、デザイナーがデジタルデータまで作ることもあるようです。そのほうが効率はいいかもしれませんが、その場合デザイナーが作れるスキルでしかデータが作れません。SUBARUはデザイナー、クレイモデラー、デジタルモデラーの三者のスキルが合わさることで、デザイナーの描いた絵を超えるクルマに仕上がるんです。車種数が少ないSUBARUだからこそできる長年積み重ねてきた作り込みが、デザインを優先して開発された新型フォレスターで存分に発揮できたと思います。

それではこれから、エクステリア、インテリアを巡り、私たちが込めたこだわりの数々をご紹介していきます。

エクステリアから醸し出す
SUVらしい重厚感


エクステリアデザインで先代からの変化が分かりやすいのはフロントフェイス周りかと思います。先代まではコの字のモチーフを入れたヘッドランプと六角形のグリルを分けて構成していましたが、新型はグリルからヘッドランプまで軸を通したひと塊のデザインにすることで、寸法以上のワイドさを表現しています。

グリルは下地となるベース、表情をつけるバー、六連星マークから伸びる一直線のモールの3つの部品で構成されていますが、各部品のカラーコーディネートをグレードごとに明確に変えたことも、新型の大きなポイントです。例えば、Premiumはベースの部分が艶のあるブラック、バーはダークグレー、モールはシルバーと3つのカラー。3色の組み合わせにより、立体感のある表情を持ったPremiumらしい上質さを演出しました。

カートピア フォレスターのグリルを指し示す髙木さん | SUBARU

フロントフェイスの違いにはみなさんすぐ気がつくかと思いますが、カーデザイナーとしては、一目見たときの重厚感をいかにアップするかがエクステリアデザインの重要課題でした。先代まではスポーティさを強調するために、ボディのキャラクター線も軽快で勢いのあるシャープなラインで構成していました。新型は、あえてキャラクター線の角に丸みをもたせ、実際のボディの素材よりも厚みを感じさせるような処理を行うことで、安定感があり守ってくれそうな、重厚な表現に大きく変えています。また、タイヤの上の部分を囲う黒いフェンダーも、新型ではフェンダーの上のボディ部分に押し込んだようなラインをつけることでボディの内側からフェンダーが盛り上がってきたような筋肉質な表現としています。

カートピア フォレスターのフェンダー | SUBARU

その他にも、実車で見てもらいたいこだわりを各所に込めています。例えばヘッドランプとリヤコンビランプは内部に骨格の存在を感じさせるシルバーのパーツを配置することで頑丈さと機能性の高さを表現しています。これまでのSUBARU車ではランプ内部に装飾を施すことはあまり例がないので、細かい作り込みを近くでじっくりチェックしていただきたいです。

カートピア フォレスターの後ろ姿 | SUBARU

新たに設定したボディカラーであるリバーロック・パールもシチュエーションによって印象が変わるので注目です。陽の光が当たる時間はパールにより陰影(コントラスト)が強調されて立体的な造形が際立ち、夜間や屋内では陰影を抑えた落ち着きのある印象を与えます。街中から大自然まで、どんなシーンにもマッチするフォレスターならではのボディカラーです。ぜひ実車でご覧ください。

カートピア クリスタルブラック・シリカ/リバーロック・パールのフォレスターPremium S:HEV EX | SUBARU

使うたびに愛着が湧くインテリア


エクステリア同様、インテリアもインパネからドアまでボリュームのある断面を水平基調で通した力強い立体構造により、安心感と高品質感を表現しました。ファミリーカーとして使用されることが多いクルマですので、後席にも人が乗る前提でさまざまな工夫をしています。カタログの装備表にも載らないような、一見しただけでは気付かないこだわりのポイントを3カ所に絞ってご紹介します。

カートピア フォレスターの運転席、助手席の全体 | SUBARU

1つ目はフロントシートの形状です。実は左右非対称で、車両の中央側(運転席だと左側、助手席は右側)のショルダー部分のボリュームを1cmほど削っています。例えば前席の運転者が後席のチャイルドシートのお子さまに何かを渡そうとしたときに、この部分が1cm削れているだけでも動きやすいということが試作を重ねる中で分かり、採用しました。

カートピア フォレスターの運転席に座り、後席側に体を向ける髙木さん | SUBARU

次に、リヤドア内側のドアトリムのデザイン。スライドドアのように前後のドアの形状が大きく違いがあるような車種以外は、リヤドアトリムはフロントのデザインをコピーしたものが採用されることがほとんどです。フロントドアは、トリムの表皮をインパネと連続性のあるデザインとし、しっかりと囲まれたタフさと安心感を演出しています。いっぽう、リヤはフロントとはデザインを変え、座る人のパーソナルスペースの周りに布地の素材を多く持ってくることで、後席の人にも包まれるような守られ感を演出しています。

カートピア フォレスターのドアトリム。リヤ、フロントの2箇所が並んでいる | SUBARU

3つ目がリヤゲートトリムです。あまりデザインをしない箇所ですが、あえて凹凸をつけ、6角形の盛り上がった部分に等高線をモチーフにしたテクスチャーとSUBARUロゴを入れました。リヤゲートに腰掛けながらレジャーの準備をしているときに、ふと上を見上げるとSUBARUのロゴが目に入る。そんなシーンを想像してこだわってデザインしました。

カートピア フォレスターのリヤゲートの内側にあるSUBARUロゴに触れる髙木さん | SUBARU

こうしたデザインを行うと、設計からやり直しが必要となり、開発の工数はそのぶん増えます。それでも、このような細かい部分にも開発工数をかけてつくる……その理由は、購入されたお客さまの満足度を左右するのは内装デザインだと思っているからです。外装デザインはクルマの購入理由となる大きな要素です。いっぽう、内装は乗っているうちに「ここは使いやすいな」と、クルマへの愛着を上げていく役割を持っています。SUBARUのインテリアデザイナーは実際にお客さまが使用されてどう便利なのかまで常に考えてデザインをしており、今回の内装デザインはその面でもやりきったと自負しています。

それぞれに個性を持った、
2つのグレードのデザイン


■大自然に映える“X-BREAK S:HEV”

カートピア フォレスター X-BREAK S:HEVの外観 | SUBARU

X-BREAKはアウトドアをはじめとするレジャーを思いきり楽しみたいお客さまに向けたグレードです。他のグレードでは塗装でカラーコーディネートをしたフロントグリルや6角形のバンパーガードも無塗装で、汚れを気にせずガシガシ使えるキャラクターを演出しています。ルーフレールもX-BREAKのみにラダータイプを採用しています。このルーフレールはただデザイン的にタフなSUVらしさを見せるのではなく、アタッチメントやベースキャリアを取り付けたり、穴の部分にロープをかけて荷物を固定できたりと、多用途性に優れています。

デザイン的な特徴といえるのが、グリルやシートのステッチに施されているグリーンのアクセントです。レガシィ アウトバックのX-BREAKで採用されたエナジーグリーンというカラーです。先代のフォレスターX-BREAKにはレッドオレンジというアクセントカラーがありましたが、今回はキャンプ場などライフスタイルの中でのシチュエーションで親和性が高いこの色を採用しました。X-BREAKを選ばれるのは、アウトドアの趣味を持っていることをクルマでもアピールしたいお客さまが多いと思います。

レガシィ アウトバックのX-BREAKではワンポイントのあしらいですが、新型フォレスターではグリルのモールにエナジーグリーンが目立つようにレイアウト。ラダータイプのルーフレールと合わせて、X-BREAKのキャラクターが遠くから見ても一目で分かるようなデザインに仕上げています。

カートピア フォレスターX-BREAKのシート | SUBARU
シート表皮:撥水性ポリウレタン/合成皮革
内装色:ブラック/グレー(グリーンステッチ)
カートピア フォレスターX-BREAKのインパネトリム | SUBARU
インパネトリム:ダークグレー(グリーンステッチ)
インパネ加飾:シルバー塗装
ベンチレーショングリル加飾:ブレイズガンメタリック

■都市に映える“SPORT”

カートピア フォレスター SPORTの外観 | SUBARU

近年のSUBARUはエクステリアをブラックカラーで引き締める表現でスポーティなイメージを演出してきました。1.8L直噴ターボ“DIT”搭載グレードであるSPORTも、フロントグリルを全て艶のあるブラック塗装にすることで、スポーティな表情を作り出しています。

従来のスポーツモデルの場合アルミホイールもブラックにするところですが、新型フォレスターのSPORTでは国内モデル初採用となるブロンズ塗装を施しました。SUPER GTに参戦するSUBARU BRZでもマットブロンズのホイールを採用したり、STIのコンプリートカーでは以前からゴールドのホイールを装着するなど、金属調カラーのホイールはSUBARUならではのスポーティなアイテムとして認知されています。

また、スポーティさに加えて、上質さもテーマにしています。ブロンズの少し温かみのある金属色は、ひと手間かけた上質感を演出する狙いもあります。ホイールだけではなく、フロントとリヤのバンパーガード、サイドクラッディング、インパネの加飾パネルなどにもブロンズカラーを採用し、SPORTの個性を一目でアピールできる、統一感のあるコーディネートとしています。スポーティさを好む方にも、落ち着いた上品さを求める方にも、フォレスターのターボモデルを支持する幅広い年齢層のお客さまに選ばれるようなデザインを目指しました。

カートピア フォレスターX-BREAKのシート | SUBARU
シート表皮:ウルトラスエード/合成皮革
内装色:ブラック/グレー(ブラウンステッチ)
カートピア フォレスターSPORTのインパネトリム | SUBARU
インパネトリム:ダークグレー(ブラウンステッチ)
インパネ加飾:ブラウン塗装
ベンチレーショングリル加飾:ピアノブラック

Photographs●渡辺 幸一

※こちらの記事は2025年春号に掲載した内容です。

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