カートピア5月号 TOURING With SUBARU SUBARU XV

Touring with SUBARU

西海岸の美景ロードを走り
異文化が交わる場所へ

長崎県佐世保市〜平戸市

一年ほど前のこと、私は佐世保から長崎空港に向かうバスの車窓から海岸線を眺めていた。大村湾に散らばる大小の島々が夕日に照らされてシルエットとなり、その美しさにカメラを手放すことができなかった。「この風景をもう一度見たい」。そんな想いが募り、長崎の西海岸ロードを再び走ることに。今回は佐世保を起点に西海岸ロードの最北端、生月島[いきつきしま]を目指す。
ドライブで出会えたのは美景だけでなく、西洋伝来の文化が独自に発展した和洋折衷の風景だった。

九十九島[くじゅうくしま]の絶景と南蛮菓子をたずねて


西海岸ドライブを前に、「佐世保に来たならコレ」と佐世保バーガーで腹ごしらえ。佐世保湾に面した「ハンバーガーショップ ヒカリ させぼ五番街店」は、本店が昭和26年に創業。注文を受けてから焼き上げるのが美味しさの秘訣だ。完成まで10分ほどかかるものの、パテも玉子焼きも熱々でジューシー。1個でも食べ応え充分!

「ハンバーガーショップ ヒカリ させぼ五番街店」のスペシャルバーガー(チーズ、ベーコン、エッグ)

「ハンバーガーショップ ヒカリ させぼ五番街店」のスペシャルバーガー(チーズ、ベーコン、エッグ)

長崎県は日本一島が多く、その数は長崎県によると594、海上保安庁調べでは971に上る。半島の周りに飛び石のように島が散らばる様子は西海岸を走るとよく分かる。なかでも入り組んだリアス式海岸と大小の島々が織りなす美景で知られるのが九十九島[くじゅうくしま]。佐世保湾外から平戸瀬戸までの海上約25kmにわたり、208の島々が点在する。その全景が望める南部と北部の景勝地「九十九島八景」のうち「展海峰[てんかいほう]」、「長串山[なぐしやま]公園展望所」を訪れ、大小無数の島々に圧倒される。長串山公園は5月にかけて10万本のツツジが斜面を覆い、さながら“天空のつつじ園”といった趣になるという。

「展海峰」から望む九十九島南部の大パノラマ。

「展海峰」から望む九十九島南部の大パノラマ。

今回の旅のパートナーはWRX S4。展望台までは、つづら折りの道だが、シートが身体をしっかりと包み込み、加速がスムースで滑らかにコーナリングできるので、快適なドライビングが愉しめた。

平戸大橋をバックに走るWRX S4 2.0GT-S EyeSight。

平戸大橋をバックに走るWRX S4 2.0GT-S EyeSight。

平戸大橋を渡り、江戸初期に日本初の西洋貿易港として栄えた平戸へ。西洋からもたらされた文化のひとつが、南蛮伝来の菓子。文亀2(1502)年創業の「平戸蔦屋(按針の館)」は、ポルトガルから伝わったカスドースの元祖といわれる。卵黄にくぐらせた専用のカステラを熱した糖蜜で煮て、最後にグラニュー糖をまぶした菓子で、甘みの中にコクが感じられる。一方、花かすてぃらはカステラの生地でこし餡を包んだもので、江戸時代のオランダ料理の献立表にも登場したとか。「今や和洋折衷菓子は珍しくありませんが、花かすてぃらはその先駆け。和と洋の垣根のない菓子が、江戸時代すでに平戸で作られていたのです」と店主の松尾俊行さん。店舗はオランダ艦隊の航海長として初来日した英国人、ウィリアム・アダムス(三浦按針)の居宅跡。中庭を臨む座敷でコーヒーと菓子を味わい、脈々と受け継がれてきた歴史に思いを馳せた。

築300年の元商家を改装した店内ではコーヒーとともに菓子が味わえる。

築300年の元商家を改装した店内ではコーヒーとともに菓子が味わえる。

「平戸蔦屋(按針の館)」

「平戸蔦屋(按針の館)」

「平戸蔦屋(按針の館)」のお菓子カスドース(左)、花かすてぃら(右)。

「平戸蔦屋(按針の館)」のお菓子カスドース(左)、花かすてぃら(右)。

信仰の歴史が息づく教会や集落へ


翌日は、市内の教会を巡る。昨年、五島列島の野崎島で「旧野首教会[きゅうのくびきょうかい]」を訪れ、丘の上に立つレンガ造りの教会に魅了され、設計・施工に携わった教会堂棟梁・鉄川与助の作品をもっと見てみたいと強く思ったからだ。キリスト教が伝来、浸透した平戸には、2つの橋で繋がれた本土、平戸島、生月島の道沿いに3カ所、鉄川与助が手がけた教会がある。まず平戸瀬戸の丘の上に立つのが「田平天主堂[たびらてんしゅどう]」。こちらは大正5(1916)年から3年かけて建てられたレンガ造りの教会で、鉄川与助の傑作のひとつといわれる。内部は白が基調で、リヴ・ヴォールト天井と柱頭装飾が印象的。ステンドグラスは上部がドイツ製で正面に日本二十六聖人が、下部がイタリア製で新約聖書が描かれている。アーチの脇には白い椿のレリーフが。「この教会は日本二十六聖人殉教者に献堂されたもので、椿のレリーフは26あります。花が丸ごと落ちる椿を用いて、二十六聖人の声なき声を表現しているのでしょう」と案内係の女性が話してくれた。平戸大橋を渡り、平戸島の中心へ。昭和4(1929)年完成の「紐差[ひもさし]教会」は鉄筋コンクリート造りのロマネスク様式。内部は折り上げ天井で、そこにも椿のレリーフが。教会という西洋的な空間に日本原産の花があしらわれるのが興味深い。そして生月島の「山田教会」を訪れる。大正元(1912)年にレンガ造りの教会が建てられ、正面は後に改装されている。内部装飾は木造で趣があり、壁には神父による約3万頭の蝶の羽で作られた装飾画が飾られている。教会内部の撮影はできないため、美しさを目に焼き付けた。

ロマネスク様式で赤レンガ造りの「田平天主堂」。正面にはマリア像が。

ロマネスク様式で赤レンガ造りの「田平天主堂」。正面にはマリア像が。

白亜の外観が青空に映える「紐差教会」。

白亜の外観が青空に映える「紐差教会」。

生月島の「山田教会」。レンガ造りだが、建築当初は正面の壁と玄関が木造だった。

生月島の「山田教会」。レンガ造りだが、
建築当初は正面の壁と玄関が木造だった。

生月大橋の手前には、教会以外のキリスト教関連遺産もある。美しい棚田風景が広がる「春日集落」は、隠れキリシタンが生活していた集落で、今も伝統文化が継承される里だ。田植えと稲刈りの時期は、農道へのクルマの進入が叶わないが、普段は丸尾さま(山)付近まで進入できる。知らないと見過ごしてしまう遺跡もあるので案内所で、春日地区探索マップを入手して巡るといい。

断崖の上に立つ「大バエ灯台」が、水平線に沈み行く夕陽に照らし出される。

断崖の上に立つ「大バエ灯台」が、水平線に沈み行く夕陽に照らし出される。

生月島では、高さ約20mの柱状節理が南北に約500m続く「塩俵の断崖」の絶景を堪能し、島の最北端の「大バエ灯台」まで足を延ばした。帰りは美しい夕景に出会いたいと、「生月サンセットウェイ」へクルマを走らせた。

生月島西部の海岸線に見られる断崖の中でも、壮大な規模と複雑な表情が観賞できる「塩俵の断崖」。

生月島西部の海岸線に見られる断崖の中でも、
壮大な規模と複雑な表情が観賞できる「塩俵の断崖」。

山間から海へと続く「春日の棚田」にて、WRX S4 2.0GT-S EyeSight。

山間から海へと続く「春日の棚田」にて、WRX S4 2.0GT-S EyeSight。

今月のルート


ハンバーガーショップ ヒカリ させぼ五番街店〜蔦屋〜
カトリック田平教会〜カトリック紐差教会〜カトリック山田教会

今月の紹介ポイント


ハンバーガーショップ
ヒカリ させぼ五番街店

長崎県佐世保市新港町3-1 させぼ五番街テラスゾーン1F
TEL 0956-22-0321
営業時間:10:00〜21:00
定休日:無休(年末年始除く)
http://hikari-burger.com

平戸蔦屋(按針の館)

長崎県平戸市木引田町431
TEL 0950-23-8000
営業時間:9:00〜19:00
定休日:無休
http://www.hirado-tsutaya.jp

田平天主堂

長崎県平戸市田平町小手田免19
見学受付時間:9:00〜17:00
(但し、ミサ、冠婚葬祭時には不可の場合あり。閉まっている場合もあり)
※世界遺産候補エリアにあるため、見学の際には事前連絡を。
詳細は下記ホームページから。
https://kyoukaigun.jp

紐差教会

長崎県平戸市紐差町1039
見学受付時間:8:00〜14:00
(但し、ミサ、冠婚葬祭時には不可の場合あり。閉まっている場合もあり)

山田教会

長崎県平戸市生月町山田免440-2
見学受付時間:9:00〜17:00
(但し、ミサ、冠婚葬祭時には不可の場合あり。閉まっている場合もあり)

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