車の発明以前から、馬は人間の良きパートナーだった。
乗馬という素晴らしい体験は、
私にテクノロジーの本質を伝えた。

レヴォーグで旅する青森県の旅

2022.02.25 | #14 Aomori Touring /Day4:EXPERIENCE「ホースレジャーin八甲田」

その日、馬術競技を見たのは、ただの偶然だった。TVをつけたらたまたまやっていた放送。だが、チャンネルを変えようとした私の手はそのまま止まった。人馬一体。力強い筋肉で障害を飛び越える馬、その鞍上で体幹の振れない騎手。その凛とした美しさに魅せられた。
車に乗って旅をしていると、ふと体と車が一体になる感覚に包まれることがある。インジケーターが示す以上の情報を、まるで拡張された神経が捉えるような感覚。私にとってその瞬間は、運転の醍醐味だ。
あの美しい馬術競技を見て、ドライブの至福の体験を想起し、そして私は乗馬に俄然興味が湧いた。次の旅では、乗馬に挑戦してみよう。
チャンスは意外にもすぐに訪れた。これから向かう予定の青森に、冬でも申し込める乗馬体験施設があるのだという。名は「ホースレジャーin八甲田」。その名の通り八甲田界隈を拠点にし、冬は十和田で乗馬体験ができるらしい。
青森市と十和田市、隣接する両市の距離はそう離れていない。だが冬の青森で地図上の距離はあまり意味をなさない。私は緊張しながら、雪道をじわじわと進む。スタッドレスタイヤが雪を噛む。その力強いグリップ感を頼りに、私は十和田市にたどり着いた。
青森県 レヴォーグから雪一面の車外を眺める | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 雪に覆われたホースレジャーin八甲田 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
体験乗馬といえば、係員が綱を引いて馬場内を歩く引き馬が一般的だ。だがここでは簡単な指導の後、ソロで駆け足までできるようにしてくれるという。わずか数十分の体験で、本当にそんなことができるのだろうか。
「腰を浮かせて、膝で振動を逃がすんです。大丈夫、難しくないですよ」。
私の不安を見透かして教えてくれたのは、インストラクターの高岡和人氏。白髪の長髪にテンガロンハットがなんとも様になっている。いかにもワイルドな風貌だが、実は髙岡氏の本業は税理士。64歳ではじめて馬に乗ってその魅力に取りつかれ、わずか半年で流鏑馬をするほど上達したのだという。
そんな髙岡氏に促され、さっそく馬にまたがる。
乗り方、降り方、進み方、曲がり方、止まり方。わずか10分ほどのレクチャーで、いきなり実地に移る。不安は残る。だが愉しみが勝っている。
青森県 「ホースレジャーin八甲田」インストラクター髙岡氏が馬を引く様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「ホースレジャーin八甲田」インストラクター髙岡氏とレヴォーグ(クリスタルホワイトパール) | SUBARU グランドツーリングNIPPON
私が跨ったのは、月子という名前の、金色の毛が美しい馬だった。
「よろしく」。
小さく伝えて、一気に鞍の上へ。視点が高い。鞍は不安定。雪に馬の足が取られ、ときどき大きく揺れる。だが何よりも印象的だったのは、自分よりも大きな生き物と触れ合っている感覚。それは幼子が母の腕に抱かれるような、心が穏やかになる安心感だ。
かかとで馬の腹を2回、蹴る。進めの合図。
手綱を右に引く。右に曲がれ。左に引く。左に曲がれ。後ろに引くと止まれ。
「伝わっている!」
乗馬経験者にとっては当然のことかもしれないが、合図が伝わりその通りに動いてもらうことは、未知の感覚であり、感動だった。
駆け足のときは中腰、止まれの合図は短く1回、胸を張り視点は遠くへ。少しずつコツが掴めてきた。車が誕生するはるか昔から人間のパートナーだったという事実が、実感として理解できる。
青森県 「ホースレジャーin八甲田」インストラクターと馬 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「ホースレジャーin八甲田」乗馬体験の様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「ホースレジャーin八甲田」外観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
しばらく乗馬を愉しんでいると、息が上がってきた。揺れる馬上でバランスを取り続けることは、予想以上の運動のようだ。馬の吐く息も白い。首元を撫でると体温が伝わってくる。力強く生きている証。そんな生き物と、非言語のコミュニケーションを通して、意思疎通できた喜び。都会で生きてきた中で足りなかったピースが見つかったような感動だった。
わずかな時間の体験で、自分の中で多くのものが変わった気がする。それは生命への感謝や慈しみだけでなく、日常の道具への接し方や享受する利便性への思いなどさまざまだ。
乗馬体験は全国に数あれども、初日でフリーライディングまでできる施設は希少だ。腰を浮かせて衝撃を逃がす独特の乗り方が、それを実現しているのだという。
「愉しかったでしょう?」
「最高でした」。
見送ってくれた髙岡氏に、私は偽りなく応えた。
「ホースレジャーin八甲田」には若いスタッフも多い。皆、大自然の中、馬と暮らしていく生き方を選んだ清々しい若者たちだった。皆が笑顔で手を振ってくれた。
後ろ髪を引かれながら帰路についた。
運転席に座る感覚も、以前とは変わっていた。アクセルを踏めば進む。ハンドルをひねれば曲がる。そんな“当たり前”の影に隠れたテクノロジーを改めて思う。乗馬という素晴らしい体験を通して、最新技術に目を向ける。そんな予想外の収穫もまた、旅の愉しみのひとつなのだ。
青森県 「ホースレジャーin八甲田」馬の模型 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 「ホースレジャーin八甲田」スタッフ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
青森県 レヴォーグ(クリスタルホワイトパール)と「ホースレジャーin八甲田」の馬 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

ホースレジャーin八甲田
住所:⻘森県十和田市法量字谷地14-25
電話:0176-51-5108   
URL:https://hld-aomori.jp/hakkoda
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