舟屋の町・伊根町の宿で体験した
日本で一番、海に近い暮らし。
目の前の海から学ぶ、知らなかった京都。

2022.10.14 | #65 Kyoto Touring /Day7:Stay「伊根の舟屋」「伊根えびすや千歳」

京都府北部にある、“海の京都”丹後半島。
スケールの大きい絶景が広がり、その圧巻の景色はどれだけ車を走らせても見飽きないほど目を愉しませてくれた。そこで感じたのは、大自然の圧倒的なエネルギー。あまりの自然の偉大さに、心が震える。
やがて車は、丹後半島の北東部にある伊根町に差し掛かった。ここでは今度は、人間文化の美しさと偉大さに驚かされる。なだらかなカーブを描く海岸線に、きっちりと並ぶ無数の舟屋。その姿は毅然と自然に立ち向かう、人間の陣のようにも見えた。ここでどのような生活が営まれているのだろう。この景色を眺めただけで、さまざまな想像が湧き上がる。
京都府 丹後半島の海沿いを走るレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

自然豊かな丹後半島の道。海と山と森が織りなす絶景は、いつまでも見飽きることがない。

京都府 展望台から見渡す伊根町 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

道の駅「舟屋の里 伊根」の展望台から見渡す伊根の舟屋。平地が少ない地形もこの景観の形成の一因であることがわかる。

「日本で一番、海に近い暮らし」。
伊根町を伝えるときによく使われている言葉だ。
なぜ“一番”などと決められるのだろうか? そんな疑問は、伊根町を訪れるとすぐに溶けて消える。何しろ家が海と接しているのだ。これ以上近づけば、それはもう海の中だ。「一番海に近い」は誇張ではなく、この伊根町を表している。
駐車場に車を停め、近くでもらったパンフレットに目を通してみる。
周囲5kmにわたり230軒の舟屋が建ち並ぶ伝統的建造物群保存地区。沖合に浮かぶ青島と周囲を囲む山々のおかげで風と波から守られていることなどから、この独特の舟屋が生まれたのだという。
そんな知識を思い返しながら、少し街を歩いてみる。
舟屋には船が納められている。この地の漁師たちは、生活から最短距離で漁に出ることができるのだろう。干されている網や、魚を干している籠もある。軒先や二階のベランダから釣り糸を垂らすことだってできるだろう。自宅の冷蔵庫に行くほどの距離に、海があるのだ。ここの人たちにとって、海はどんな存在なのだろう。
ふと足元を見てみる。
つま先のすぐ先は海だ。水は思っていたよりも深い。だが底が見通せるほど澄んでいる。そしてそんな澄んだ水の中を、魚の群れが泳いでいる。本当に群れなのだ。10や20ではない。おそらく数千といった単位の魚が、ふと目を向けた先に泳いでいるのだ。私の小さな興奮をよそに、住民と思しき方々は平然と通り過ぎていく。とっくに見慣れた光景なのだろう。
京都府 レヴォーグの車内から眺める伊根の街並み。 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

レヴォーグの車内から眺める伊根。目線と海面の近さが、いっそう海を身近に感じさせる。

京都府 伊根町 港沿いに停車するレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

伊根にはガイドツアーや舟屋の内部見学、海上から舟屋を眺める遊覧船の運行など、さまざまな体験も。

京都府 透明な海の中で泳ぐたくさんの魚 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

ふと見下ろす海のこの透明度と魚の数。地元の方が海を大切にしていることが伝わる美しさ。

京都府 伊根町 舟屋造りの家屋 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

「日本で一番、海に近い暮らし」が腑に落ちる舟屋の造り。1階は漁船をしまう納屋、2階は居住スペースになっている。

京都府 伊根町 舟屋造りの家屋と奥に見える海 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

舟屋のはじまりはおよそ400年前、江戸時代初期にまで遡る。

私が知る生活や日常と、あまりにかけ離れた光景だった。
ただ通り過ぎただけなら、ただの珍しい景色で終わっていたかもしれない。だが、今日の私はこの地の宿を予約していた。伝統的な生活の中に泊まる。少しだけでも、この地の生活を体験してみる。それは考えただけでも胸が躍る体験だ。
『伊根えびすや千歳』は、観光客が多いエリアから外れた亀島という場所にあった。向かってみると先程よりも、生活の気配が強い。軒先には洗濯物が干され、台所から食事の支度の気配が漂う。改めてここが景勝地ではなく、生活の場であることを感じる。そんなリアルな場に宿泊できることが、なおうれしい。
『伊根えびすや千歳』は、建ち並ぶ建造物群に溶け込む正統派の舟屋だ。訪れてみて知ったのだが、海側に舟屋が建ち、道路を挟んで母屋があるのがこの地の一般的な造りらしい。この宿も同様で、宿泊は母屋だが目の前の舟屋も宿泊客専用で食事をしたり、ワインを愉しんだりできるという。
まずは母屋の引き戸を開く。
土間があり、その先にリビングがある。出迎えてくれた藤原邦彦さんによれば、築100年以上の家屋をリノベーションしているという。言われて改めて室内を見渡す。柱や梁には、長い時を経た建物独特の重厚感がある。それを損なうことなく、それでいてどこかヨーロッパの雰囲気さえ漂うスタイリッシュな空間に生まれ変わっている。
2階の寝室を見てみても、その印象は変わらなかった。
家具や建具は、豪華だ。その質感やデザインを見てみれば、それが名だたる名品であることが窺える。だが、それが浮いて見えることはない。それほどまでに、この建物自体の存在感が強いのだ。
京都府 『伊根えびすや千歳』母屋の居間 内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

『伊根えびすや千歳』母屋の居間。フランス人デザイナーが日本文化の伝統を汲んで意匠を凝らした。

京都府 『伊根えびすや千歳』世界的和紙作家・堀木エリ子氏の作品が飾られている客間の一室| SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

客間の一室には、世界的和紙作家・堀木エリ子氏の作品が飾られている。

京都府 『伊根えびすや千歳』客室 内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

3室の客室はどれもゆったりとした造り。それぞれにトイレとシャワールームが完備されている。

京都府 『伊根えびすや千歳』寝室 内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

寝室は3室で、最大6名まで宿泊可能。

3室ある寝室や宿泊者用のキッチンなどを見て、向かいの舟屋に足を向けた。先程は外から見るだけで、中に入ることはできなかった舟屋。今度は誰にも邪魔されず、座り、くつろぎ、海を眺めることができる。
舟屋の中は少し暗く、額縁に切り取られたように海が見えた。波の低い湾だけに豪快な波音は響かないが、耳を澄ますとちゃぷん、ちゃぷん、と水が寄せる音が聞こえる。その穏やかさがこの宿を包んでいる。
一日一組限定の一棟貸し。食事は周辺の飲食店に行くか、自分で調達した食材をキッチンで調理する。それは、この地の生活に近づく、暮らすような滞在だ。
「何もしなかった一日を、後悔しないような宿」
藤原さんは、そう言った。
たしかにここでは「何もしないこと」も体験だ。ただ心静かに、その地の生活に触れる。旅先で出合うそんな時間は、まるで別の人生を歩む物語の登場人物になったように私の心を豊かにしてくれる。
京都府 『伊根えびすや千歳』宿泊者専用の舟屋 内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

宿泊者専用の舟屋。テーブルでくつろぐほか、デッキで釣りをすることもできる。

DATA

伊根町観光協会
住所:京都府与謝郡伊根町字平田491
TEL:0772-32-0277
URL:https://www.ine-kankou.jp/
伊根えびすや千歳
住所:京都府与謝郡伊根町亀島896
TEL:0772-22-1313
URL:http://www.amanohashidate.org/chitose/93/
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