山の斜面を埋め尽くす宝の山。
能登半島のキノコ狩りで知った
里山の豊かで贅沢な暮らし。

2022.11.25 | #70 Ishikawa Touring /Day3:Experience「春蘭の里」

日本海に細長く突き出た地形から、能登半島は海のイメージが先行しがちだ。
しかし実際に車で走ってみると、山もまた印象深かった。
標高はそう高くない。せいぜい500mほどだろう。だが生い茂る木々の密度が高く、森の豊かさを感じさせる。そして低山ゆえに人里と山や森の距離が近いのだ。きっと昔からこの地の人々は、山を敬い、山と密接に関わりながら暮らしてきたのだろう。
ただ通り過ぎるだけで、そんな想像が浮かぶ。
だから私は、より深く里山に入り込みたくなる。調べてみると『春蘭の里』という能登の里山文化を体験できる場所があるという。本物の農家に宿泊できる農家民宿群だが、季節により、山菜採り、田植え、薪割り、釣りなど、さまざまな体験もできる。いまの時期なら、キノコ狩りだ。さっそく予約して、現地へと向かった。
石川県 能登の田園風景を駆けるレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

自然豊かな低山が連なる能登半島の内陸部。昔ながらの里山も随所に残されている

地図によると『春蘭の里』は、「のと里山空港」から15分ほどの場所だった。便利な場所だが、空港から5分も走るとすぐにあたりは山景色に変わった。稲穂の実る田園を通り、小川にかかる橋を渡り、目的地に到着する。『春蘭の里』実行委員の多田喜一郎さんと、理事長の多田真由美さんが出迎えてくれた。
豪快で陽気な喜一郎さんと、少しシャイだが柔和で真摯な真由美さん。似ていないようでどこか共通点もある父娘コンビに連れられて、さっそくキノコの山に向かう。
歩きながら聞いた話によれば、この『春蘭の里』には40軒以上の農家民宿があるという。どの民宿も1日1組限定が基本。化学調味料と砂糖を使わず、輪島塗のお膳で食事を出すことがルールとして定められているという。
逆にいえば、そのルール以外は自由。各民宿が自分の家に伝わる伝統を体験させてくれる。つまり本物の里山の農家で、本物の体験ができるのだ。
『春蘭の里』ではそんな取り組みを26年も前に始めている。今では修学旅行の学生たちや外国人も多く訪れるという。若い世代の移住者が新たな店を開くこともあるという。日本中の農村で問題になっている高齢化や過疎化。これはその解決に向けた貴重な成功例だ。
「でも反対意見もあったのではないですか?」
私は率直な疑問をぶつけてみる。里山の集落だ。外から人を呼ぶことに抵抗がある人だっているだろう。
「今だってありますよ。だけどみんなが納得するまで待っていたら何もできない。とにかくやってみて、良い結果を見せてあげるしかないんですよ」
喜一郎さんはそう言った。
石川県 『春蘭の里』実行委員の多田喜一郎さんと理事長の多田真由美さん | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

多田喜一郎さん、真由美さん。能登の里山文化を伝えるために親子で奔走する

キノコの山に到着した。
「そこ、きのこがあるよ、踏まないで」
言われて足を止める。見ると地面から白っぽいものが生えている。 椎茸のイメージから、なんとなくキノコは木の幹から生えているのだと思いっていた。ここでは地面のあちこちから、さまざまなキノコが生えている。
「それはソウメンタケ。こっちはシバタケ。こっちはサマツ、松茸の一種だね」
次々に指し示す喜一郎さん。地面には次の一歩を踏み出す場所さえ迷うほど、たくさんのキノコがある。教えられる前はただの地面に見えていたが、いまでは宝の山に見える。これこそが、里山に伝わる文化なのだろう。
持参したカゴは瞬く間にいっぱいになった。これから実際に調理して、食べさせてもらえるという。
石川県  キノコの山に生えるキノコ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

地面から生えるキノコは、言われなければ見落としてしまいがち

石川県 手のひらいっぱいになるほどのキノコ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

食べられないキノコも多いのでキノコ狩りは専門家と一緒に

石川県 カゴいっぱいの採れたキノコ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

小一時間でカゴいっぱいのキノコが集まった

『春蘭の里』の農家民宿第一号である『春蘭の宿』は、多田さんの家。
ここで女将さんたちとともに、先程採ったキノコを調理する。といっても難しいレシピではない。
「キノコは湯がいて醤油で煮て食べるのが一番」
それがこの地のキノコの食べ方だ。
料理を待つ間、真由美さんが宿についてあれこれ教えてくれた。輪島塗の器のこと、どの家庭にもあるという豪華な仏壇のこと、農具を使った照明のこと。その言葉の端々から、この土地への誇りが伝わってくる。若くして『春蘭の里』の理事長という重責を担う真由美さんだが、生まれ育った里への思いは誰にも負けないのだろう。
やがて炊きたての新米とともに、キノコ料理が運ばれてきた。こんなにおいしいキノコは初めてだった。味付けはシンプルなのに、どれも味と食感がはっきりと違う。どれも量が少なく、傷むのも早いためなかなか市場には出回らないという。
里山の人々は、こんなにおいしいキノコを当たり前に食べていたのか。そんな羨ましさが湧いた。教えられるまでは何もない山だと思っていた場所がキノコの宝庫だったように、知る前は何もないと思っていた里山に都会では考えられない豊かな暮らしがある。そんな事実を実感として知ることができたのも、ここ『春蘭の里』での体験の収穫だ。
石川県 春蘭の里の動画 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ
石川県 『春蘭の宿』の厨房で採ったばかりのキノコを調理する『春蘭の里』実行委員の多田喜一郎さんと理事長の多田真由美さんご家族 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

『春蘭の宿』の厨房で採ったばかりのキノコを調理する

石川県 『春蘭の宿』のキノコ料理 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

味付けはシンプルだが、それぞれのキノコの味わいが活きる

石川県 輪島塗のお膳に盛り付けられた『春蘭の里』のキノコ料理 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

輪島塗のお膳に料理を並べて出すのが『春蘭の里』のルール

DATA

春蘭の里
住所:石川県鳳珠郡能登町宮地16-9
電話:0768-76-0021(春蘭の里事務局)
URL:https://shunrannosato.info/
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