水が流れ、動物と共生し、キウイが実る。
本能的に美しいと感じる
循環型の農園。

レヴォーグで旅する静岡県の旅

2022.06.10 | #39 Shizuoka Touring /Day4:EXPERIENCE「キウイフルーツカントリーJapan」

旅に出る前、私はいつも目的地について調べてみる。歴史や風土、特産を知ってから訪れると、旅がずっと充実するような気がするのだ。
今回の行き先は静岡県。特産物を調べてみると、茶やわさび、みかんのほか、いちごやメロンも多く採れるらしい。そしてもうひとつ、気になるワードが目に入った。
キウイフルーツ。
なんとなく、それは南国の果物だと思っていた。いや考えてみると、私はキウイがどのような木に、どのようになる果物なのかも知らなかった。
ネットで検索してみると、「キウイフルーツカントリーJapan」なる体験農場がヒットした。それは日本最大のキウイ農園だという。私は旅のプランに、その農園の名を追加した。
大規模な農園というからには僻地にあるのだと思っていたが、掛川の市街地を抜けるとすぐにキウイの看板が見えてきた。インターチェンジから10分程度の距離だ。
駐車場に車を停めて、路地を進む。そこに受付兼ショップがあり、その先のハウスがキウイ農園だ。受付にあったパンフレットによると、キウイの収穫体験のほかBBQやキャンプ、クラフト体験などもあるらしい。
キウイは収穫後に熟成が必要なため、もぎ取ったものが食べられるわけではないが、入園すれば園内で熟成されたキウイが食べ放題。さらに10ヘクタールに及ぶ園内は、ピクニック感覚で散策できるという。
静岡県 キウイフルーツカントリーJapan 外観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
静岡県 キウイフルーツカントリーJapan 受付兼ショップ 内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
入園料を支払い、中へと進む。
農園の二代目である平野耕志氏が、案内に立ってくれた。
平野氏に誘われて、巨大なハウスの中へ。そこは天井までぎっしりとキウイの枝が広がっていた。
「すごい!」
「ここで全体の1割くらいです」
思わず息を呑む私を見て、平野氏が言う。
このハウスの一角にあるクーラーボックスにある熟成済みのキウイが食べ放題だという。しかし私は、その楽しみを後にとっておくことにした。キウイについてもっと知ってから味わえば、いっそうその味を堪能できると思ったから。
平野氏によればこの農園の起源は1976 年。アメリカに農業研修に行った先代が友人からスプーン一杯のキウイの種をもらって帰ってきたことがはじまり。しかし当時はキウイ栽培のノウハウもない時代。きっとさまざまな苦労や試行錯誤があったことだろう。そこから少しずつ木を増やし、現在ここにあるのは80種1,000本以上のキウイの木。
「ここから生まれた新品種も10種類以上あるんですよ」
平野氏の言葉も誇りに満ちている。
静岡県 キウイフルーツカントリーJapanのキウイ農園 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
静岡県 キウイフルーツカントリーJapan 農園の二代目 平野耕志氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
「あの作業は何をしているんですか?」
農園で働く人の姿を見た私の問いに、平野氏が応えた。
「毎朝、花に花粉を付けているんです」
「手作業で?」
「ええ。形の良いキウイにするには、手作業でキレイに花粉を付ける必要があるんです」
受粉に適した時間は、朝露で雌しべが湿った朝方。しかし花は咲いたら3日で散ってしまう。毎朝スタッフ総出で、何十万とある花に花粉を付ける。
「気が遠くなるような作業ですね」
私は感嘆の吐息を漏らす。
「そうですね。種を植えてから実がなるまで最短でも7〜8年。根気のいる仕事だと思います」
平野氏はそう言った。
静岡県 手作業で花に花粉をつけるキウイフルーツカントリーJapanのスタッフ | SUBARU グランドツーリングNIPPON
静岡県 キウイフルーツカントリーJapanの農園に広がるキウイの花 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
ハウスを出ると、さらに何倍も広いキウイ畑が広がっていた。平野氏に案内してもらった高台から、畑を見渡す。
私の頭に「桃源郷」という言葉が浮かんだ。
人が忘れかけていた豊かさが、この景色の中にあるような気がした。
羊が草を喰んでいるのが見えた。ニワトリやウサギも放し飼いされている。奥にある山からは、澄んだ湧水が流れ出ているのだという。
動物たちは雑草やキウイの皮を食べ、その糞尿は肥料になる。降った雨は湧水となり、地中のパイプを通って貯水池へ流れる。その貯水池では、魚が水を浄化する。
先程のハウスでできるBBQ体験も実は意味がある。ハウスには害虫が出やすい。そこでBBQや焚火をして煙を出すことで、燻煙処理の役割を果たす。
薪は剪定して行き場のないキウイの枝。燃やした炭や灰は、土をアルカリ性に保つための肥料になる。
この農園の中に組み込まれた、見事なサイクル。
この農園が美しく見えるのは、ただ整備が行き届いているからではない。ここに命のサイクルが出来上がり、無駄なく、正しく循環しているからだ。きっと人間の本能として、そのあるべき姿を美しく感じるのだ。
静岡県 上から見たキウイフルーツカントリーJapanのキウイ農園 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
静岡県 キウイ農園で放し飼いにされる羊 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
平野氏はアフリカ・ザンビアに渡り、保健指導や農業指導に携わった後、大学院で農業経営を学んだのだという。そこで身を持って学んだこと。
「もしも世界全体で災害が起きたとしたら、生き延びるのは都市化された日本よりも、循環型のアフリカだと思いました」
そこで平野氏は考えた。子どもたちに楽しみながら生きる強さを伝えたい。キウイを通して、次世代にこれからの生き方を伝えたい、と。
「現在は太陽光でのエネルギー自給を考えています。世界中に100%エネルギーを自給している農園はひとつとしてありませんが、その最初の農園になることが今の目標です」
平野氏はキラキラとした目でそう話した。
「年に一度実るキウイを、あと30数回か収穫したら引退の時期ですから、できることはどんどんやっていかないと」
そう笑う平野氏が、まぶしく見えた。
先程のハウスに戻り、キウイを頂いた。
この日の食べ放題の品種は4種。甘みが強いものもあれば、酸味が強いものもあった。美しき循環と膨大な作業の末に実をつけたキウイだと知った今、その味わいは、胸の奥に深く染み込んだ。
静岡県 キウイフルーツカントリーJapanで採れたキウイ | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

キウイフルーツカントリーJapan
住所:静岡県掛川市上内田2040
電話:0537-22-6543(9:00〜17:00)
URL:https://kiwicountry.jp/
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