マイナス15℃のキャンプ場。
身を切るような寒さの中で
改めて感じた旅の醍醐味。

レヴォーグで旅する長野県の旅

2023.3.10 | #86 Nagano Touring /Day2:STAY「菅平高原ファミリーオートキャンプ場」

ある日、ふと考えた。
私は何を探して、繰り返し旅に出るのだろう。
日常とはかけ離れた体験、その体験から得られる驚き、発見、感動。
言葉にすればそういうことだ。
だが旅慣れるに従って、予定調和の旅になっていなかったか。
事前の計画をただなぞるだけになっていなかったか。
だから私は次の目的地を、冬の長野に決めた。
雪深い冬の長野には、予想外のアクシデントがあるかもしれない。だがその分だけ、得られる体験もまた日常とはまったく違うものだろう。
同じ理由で、宿泊先も選んだ。
「日本で一番過酷なキャンプ場」という口コミが目を引いたその施設は『菅平高原ファミリーオートキャンプ場』。キャンプシーズンがメインだが、冬期も1日1組限定で利用できるという。1組限定なのは、凍結により利用できる施設が制限されてしまうため。前情報だけでも緊張が高まる思いだ。
長野市街から菅平への道は雪に覆われた山道だ。
途中休憩のために立ち寄ったドライブインでは、スタッフの女性が菅平の寒さを誇らしげに教えてくれた。
「菅平は寒いでしょう? 最低気温が北海道より低い日もあるのよ」
気をつけてね、の声に送られてキャンプ場を目指す。
雪の中をじりじりと進むようなドライブだ。
長野県 菅平高原へと向かう雪の山道を走るレヴォーグ(セラミックホワイト) | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

菅平高原へと向かう雪の山道。だが意外にも車の往来は少なくない。

キャンプ場に到着した。
キャンプサイトは昨夜から降り続いた雪に覆われていた。
受付をしながらやはり、この地の寒さが話題となった。聞けば、本州における観測史上最低気温を記録したのがこの菅平高原だという。
マイナス29.2度。想像を絶する寒さだ。そこまでの冷え込みは稀だが、今日も夜半にはマイナス15度くらいにはなるだろう、という。
教えてくれたのは、キャンプ場オーナーの宮崎さん。
「本当にやばかったらこの事務所に来てくださいね。スタッフは夜通しいますから」
そんなあたたかい言葉に勇気づけられ、キャンプサイトに向かう。
見渡す限りの雪景色。貸切のためテントはどこに張っても良いという。
私は少し車を走らせ、高台になった見晴らしの良い場所を選んだ。
長野県 菅平高原ファミリーオートキャンプ場に停まるレヴォーグ(セラミックホワイト) | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

菅平高原ファミリーオートキャンプ場。圧雪していても四輪駆動車以外の侵入は難しい。

長野県 レヴォーグ(セラミックホワイト)のトランクに積まれたキャンプ道具 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

冬のキャンプ道具は防寒重視。テントや寝袋は慎重に選択する必要がある。

テント設営の最初の作業は雪かきだった。
膝まで埋まる雪を、必要な分だけ除けて平らなスペースをつくる。
スコップで雪かきをしていると、汗が流れ出した。上着を脱ぎ、作業にあたる。高く登った太陽が雪に反射して眩しい。気温もだいぶ上がっているだろう。
私は寒さとは無縁で雪をならし、テントを張り、サイトを整える。椅子を組み立て、焚き火の準備を終え、夕飯の下準備をする。青空が美しい。肌を刺す冷気が心地良い。
「きっと冬こそキャンプのベストシーズンなんだ」
浮かれた気分の私は、そんなことまで考えていた。
長野県 レヴォーグ(セラミックホワイト)の奥で土台作りを行う男性 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

低温の菅平高原の雪質はパウダー。ある程度雪かきをしてから、足で踏み固めて土台をつくる。

長野県 張られたテントの近くでくつろぐ男性と奥に泊まるレヴォーグ | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

1日1組限定のため、周囲を気にせずのんびりできるのがこの場所の冬キャンプの魅力。

長野県 設営されたキャンプ道具 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

明るいうちに設営を済ませ、しばし休息。車が近くにあることが心の支えになる。

長野県 菅平高原ファミリーオートキャンプ場での焚き火 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ
そろそろ陽が傾きはじめる。
焚き火の準備をしようと立ち上がり、思わず身を震わせた。
気温が急激に下がっていた。そして太陽もあっという間に沈んでいった。
そして噂に聞く寒さがやってきた。
目元や耳など肌の露出した部分がキリキリと冷える。芯から冷えていく感覚に、焚き火の前から片時も離れられない。
焚き火でシチューをグツグツ煮込み、野菜やソーセージを焼き、できたそばから熱々を口に運ぶ。体の中からじわりと温かさが広がる。それは生命の根源に響くような幸福感だ。もちろんおいしいのだが、それ以前に体が歓声をあげて喜んでいる感覚だった。
食事を終えると、することもなくなった。
だがそれは嫌な退屈ではなく、心地良い余白の時間だ。まわりは一面の雪景色。見える範囲に人の気配はなく、ただ静かに月明かりが照らしている。そして頭上には、満点の星空。
カップの中の飲みかけのコーヒーはカチカチに凍っていた。気温はマイナス20度に近い。その未体験の寒さは、寒さは、都会で暮らす私にとって日常とはかけ離れたものだ。私はそれを、文字通り肌で感じた。
きっとこの体験と発見は、旅から戻った私にも影響を与え続けるものなのだろう。街の便利さや明るさや温かさを感じながら、私はこれからの人生で何度も、この日の寒さを思い出すのだろう。それほどまでにこの凛とした冷気は、私の心に気持ちよく響いた。そしてこれこそが、私が旅に出る理由なのだと思った。
焚き火の薪が尽きたら、寝袋に潜り込んで眠るしかない。それまでもう少し、この寒さに浸っていよう。私は凍える手を擦り合わせながら、最後の薪を焚き火に足した。
長野県 菅平高原の中央に張られたテント | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

菅平高原の標高は1320m。この標高や地形から、本州内で指折りの寒冷地として知られる。

長野県 夜の焚き火の様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

日が落ちると急激に気温が下がる。焚き火の炎が命綱だった。

長野県 菅平高原ファミリーオートキャンプ場 夕食のソーセージと野菜料理 | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

夕食はじっくり煮込んだシチューと、ソーセージと野菜。炎で仕上げる豪快な料理が、たまらなくうまい。

長野県 菅平高原ファミリーオートキャンプ場 夕食のシチュー | SUBARU グランドツーリングNIPPON | SUBARU | レヴォーグ

雪のなかで味わうシチューのおいしさに、火とともに発展した人類文化の歩みを思う。

DATA

菅平高原ファミリーオートキャンプ場
住所:長野県上田市菅平高原1223-2767
TEL:0268-74-2408
URL:http://sugadaira.camp/
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