100年後も続く仕事でありたい。
静岡のお茶への誇りを胸に
オーガニック抹茶をつくる茶農家の挑戦。

レヴォーグで旅する静岡県の旅

2022.06.03 | #37 Shizuoka Touring /Day2:EAT「MATCHA MORE」

夏も近づく八十八夜。
茶摘みの情景を歌った“八十八夜”とは、5月初旬のこと。その新茶の時期から夏頃まで、お茶の収穫は続く。つまりお茶王国・静岡でもっとも忙しい季節だ。
静岡を旅していると、あちこちでお茶を振舞われる。レストランや宿ではもちろん、ちょっと立ち寄った雑貨屋などで「ゆっくり見ていってね」とお茶を頂くこともある。そして私は思い出す。昔は身近だった、お茶を淹れるという文化の豊かさに。私は、もっとお茶を知りたくなる。
そんなとき立ち寄った川根の茶屋で、おもしろい話を聞いた。
隣町の島田市に、オーガニックの抹茶だけを手掛ける若手グループがいる。カフェもプロデュースしている。すぐに検索してみると、そう遠い場所ではない。カフェは土曜と日曜だけの営業のようだが、幸運にも今日は日曜だ。私はさっそく、その『MATCHA MORE』というカフェに車を走らせた。
道は徐々に山に近づいていった。山の隙間に茶畑が広がり、視界の大半が緑色になる。窓から流れ込む空気にさえお茶の香りがするような、爽やかな眺めだ。走るごとに私の胸は期待に高まる。
静岡県 茶畑を走るレヴォーグ(セラミックホワイト)| SUBARU グランドツーリングNIPPON
静岡県 MATCHA MORE看板 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
到着したそのカフェは、ラボのような雰囲気だった。倉庫か工場を再利用したような造りだが、明るくスタイリッシュにリノベーションされている。席に着いてメニューを眺める。「本気の抹茶ラテ」なる一品があった。名前に惹かれ注文してみる。都心のアパレルショップにいそうなおしゃれな男性が、注文を受けてから抹茶をたてはじめた。その所作を眺めているうちに、抹茶ラテができあがった。
ひと口、味わってみる。素晴らしい抹茶の香りが鼻に抜けた。頭は、この香りの後に苦味が来ることを予想している。しかし「さあ、苦味が来るぞ」という予想に反し、口の中の抹茶は、豊かな余韻を残して消えていった。
静岡県 MATCHA MORE「本気の抹茶ラテ」 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
静岡県 抹茶をたてるMatcha Organic Japan代表 田村善之氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
「とても濃いのに苦味がなくて、香りと旨みだけが強い。おいしいです。」
私が感想を漏らすと、カウンターの男性は顔をほころばせた。聞けば彼がこのカフェを手掛ける『Matcha Organic Japan』の社長である田村善之氏だという。ラテを味わう間、田村氏に話を伺うことができた。
田村氏はもともと、隣町の川根市で13代続く茶農家の生まれ。だが若い頃は家業を継ぐ気はなく「12代で終わるのだろうな」と思っていたという。東京の大学を出て、そのままアパレルメーカーに就職。その後、サービス業に興味がわき、介護などの仕事に携わっていた。
「東京にいるとまわりの人から“茶畑ってきれいだよね”とか“静岡のお茶はおいしい”とかいわれる。それまで当たり前だと思っていたことが、徐々に違う見え方になってきました」
そしてお茶に興味が湧き、調べていくうちに、問題も見えてくる。とくに茶農家の高齢化と、煎茶の価格下落は大きな課題だった。そこで田村氏は、海外でも需要が高い抹茶、それも完全オーガニック栽培に挑む。最初はひとりきりで、そこから仲間が集まり、いまでは同年代の茶農家の後継ぎ5人とともに。
静岡県 MATCHA MORE外観とMatcha Organic Japan代表 田村善之氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
田村氏と話す流れで、隣に建つ加工場を特別に見せてもらえることになった。加工場では機械がフル稼働していた。時折、摘みたてのお茶を満載した軽トラがやってきて、どさりと葉を落としていった。
「煎茶が揉んで水分を押し出してから熱風で乾燥させるのに対して、抹茶は炙るように熱だけで乾かします。こうすることで香りと旨みが出てくるんです」
加工場の中は、熱気とお茶の香りに包まれている。機械の音のなか、工程のひとつひとつを丁寧に説明してくれる田村氏は、お茶に対する誇りで満ちているようにみえた。
静岡県 上空から見た茶畑でお茶を摘んでいる様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
茶畑を眺めながら、再びカフェに戻る。茶畑や抹茶の加工工程を見ていたら、シンプルな抹茶が飲みたくなった。抹茶をオーダーすると、再び田村氏がたてていく。
「跡継ぎのいない茶農家の耕作放棄地だった土地で、今は栽培もはじめています。茶の木の植え替えもしているんですよ」
淹れたての抹茶を出しながら田村氏が話す。
「植え替えたらすぐに収穫できるのですか?」
「収穫は7年後です」
私の問いに、田村氏は笑った。7年後のために、今日、苗を植えること。そのスケール感をしばし胸の中で考える。農業という、自然とともに歩む仕事のなかでも、それは忍耐のいることだと思った。
「100年後も続く農業でありたい。お茶は静岡の誇りですから」
田村氏はそう言った。かつて「12代で終わる」と思っていたという茶農家の後継ぎは、立派な13代目だった。
静岡県 MATHCA MOREで販売されているオーガニック抹茶の茶葉 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
静岡県 オーガニック抹茶の茶葉の芽 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

MATCHA MORE/Matcha Organic Japan
住所:静岡県島田市身成1476-2
mail:info@matchaorganicjapan.com
URL:https://matchaorganicjapan.com/
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