小麦と名水と、人を想う心。
北海道で出合った最高のうどんは
私の心まで満たしてくれた。

レヴォーグで旅する北海道の旅

2022.07.08 | #46 Hokkaido Touring /Day4:EAT「名水うどん 野々傘」

羊蹄山の麓をドライブしていると、道端に「この先 うどん」の案内看板を見つけた。興味を惹かれ、案内に従って車を進めてみる。
考えてみると、北海道にうどんのイメージはなかった。
広大な大地に広がる麦畑。シェア60%以上で独走する日本一の小麦の生産地にも関わらず、やはり北海道は蕎麦やラーメンのイメージが強い。だが原材料に加え、羊蹄山の地下を通ってきた美しい水まであるのだ。きっとうまいうどんが食べられるのだろう。私はまだ見ぬ北海道のうどんに期待を寄せつつ、車を走らせる。
看板からしばし進むと、「名水うどん 野々傘」が見えてきた。驚いたことに、店の前には行列ができている。観光客が少なく、どこを訪れても貸切状態だったニセコでは予想外の光景だった。
しばし待って店内に通される。メニューを眺めてみると、ぶっかけうどんなどの定番に加え、グリルチキンうどんや山わさび香る肉ぶっかけといった変わったメニューも並んでいる。どのメニューにも丁寧な説明が添えられている。きっと店主が気配りの行き届いた人物なのだろう。
北海道 名水うどん 野々傘のメニュー表 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 名水うどん 野々傘の本日のおすすめ看板 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
オーダーを済ませて、店内を見渡してみる。民芸調の店内に古道具が配置されている。格子窓の向こうには羊蹄山を一望。どれだけ待っても苦にならないような、ゆったりとした穏やかさに満ちた空間だ。
店内の雰囲気を愉しんでいると注文したうどんが届いた。
さっそくひと口味わい、すぐさま行列のできる人気ぶりに納得した。麺はやや細めだがモチモチとしたコシがあり、そのコシを愉しんで噛んでいると小麦の風味が口中に広がる。出汁のほのかな甘み、手のこんだ具材のバランスも絶妙。たっぷりのボリュームもうれしい。
北海道 名水うどん 野々傘 座敷 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 名水うどん 野々傘 内観 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 名水うどん 野々傘 ちく玉うどん | SUBARU グランドツーリングNIPPON
夢中で食べていると、店内の客がはけてきた。帰る客を笑顔で見送っているのが店主だろう。目が合ったので、声をかけてみる。思った通り、彼が店主の野々田耕一郎氏だった。「おいしかったです」と素直な感想を伝えると、弾けるような笑顔で喜んでくれた。
「お客さんを喜ばせることだけが、ここをやっている目的。だからその言葉が一番うれしいんです」
それだけで人柄が伝わるような、素敵な言葉だった。
北海道 名水うどん 野々傘 店主 野々田耕一郎氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
聞けば野々田さんは、岐阜生まれの大阪育ち。北海道の大学で酪農を学んだ後、大学事務員として務めていた。そして30代の後半で脱サラを思い立つ。
「脱サラのセオリーといえばラーメン屋ですが、研究のために食べ歩いている間に、うどんも良いなと思い始めたんです」
それから独学で製麺を学び、地方から来た学生に試食してもらっては感想を聞いて腕を磨いていった。そしてついに、学生から「まあまあおいしい」の声があがる。しかし野々田氏の修業は、まだ終わりではない。39歳で退職し、今度は大阪にあるうどんの名店で本格的なうどん作りと経営を学ぶ。そして2005年、満を持して羊蹄山の麓に、この店を開いたのだ。
「僕は職人気質ではないので、自分が打ちたいうどんよりも、お客さんが喜ぶうどんを作っていきたい」
そう話す通り、野々田氏のうどんには、食べる側のことを考えた気遣いが満ちている。たとえばうどんは圧力鍋で茹でることで、独特のもっちりした食感を出しつつ、提供時間を短縮。待たせすぎないようにとの配慮が、良い形で味にも作用している。肉うどんの肉は、最後に炙って香ばしさをプラス。グリルチキンを乗せるのは、「少しでもヘルシーなものを」との想いから。
北海道 名水うどん 野々傘 うどん釜| SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 名水うどん 野々傘 水で絞めるうどん | SUBARU グランドツーリングNIPPON
北海道 名水うどん 野々傘 肉をバーナーで炙る様子 | SUBARU グランドツーリングNIPPON
食べ終わった瞬間に、また来たくなるようなうどんだった。それはおいしさだけでなく、店主の人を幸せな気分にさせる優しさがメニューに反映されているからだろう。まだ見ぬ誰かのことを想像し、その幸せを願えること。それはひとつの才能であり、そしてものづくりの原点でもある。北の大地で、偶然そんな精神に出会えたことは、うまいうどんを食べられたことと同じくらい幸運だったと思う。
北海道 名水うどん 野々傘 店主 野々田耕一郎氏 | SUBARU グランドツーリングNIPPON

DATA

名水うどん 野々傘
住所:北海道虻田郡京極町更進466-5
電話:0136-42-2381
URL:https://www.facebook.com/nonodasan/
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